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2016年 09月 06日

Entada parvifolia の開花

9月に入ってEntada parvifolia コバモダマの花が咲きはじめた。20105月に西表島鹿川の浜に漂着した種子を蒔いたもの。花が咲くようになってから3年たつが、まだ、一度も莢を実らせたことがない。今回も雌蕊を確認したが子房の発達が見られない。こんな事実を前にするといつも迷う。「花の咲く時期によって異なるのだろうか」「個々の花によって異なるのだろうか」などなど。写真の花穂を見ても一昨日咲いた花はすべて落ちている。現在咲いている先端部分の花にも子房が見られないので着実することはないだろう。そこで、20109月に自生地であるフィリピン・ブスアンガ島に行って撮った花の写真を確認してみた。すると写っている花にも子房は見られなかった。それでも同じ株に莢が残っていたので、結実はしているのだろう。まだ分からないことが沢山ある。

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# by modama | 2016-09-06 12:03 | Comments(0)
2016年 08月 31日

ハナバチと遊ぶ

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花とチョウ、花とハチの関係は花粉媒介者として多くの人が知っている。確かにミツバチが花を訪れ脚に沢山の花粉を着けている姿は見た人も多いだろう。しかし、ミツバチが他の花の雌蕊に花粉を受粉させる瞬間を見た人は稀ではないだろうか。人は本などで一度知識を得るとそれらが当然な出来事のように理解してしまう。受粉の瞬間など小さな雌蕊の先端の出来事をはっきり確認することは難しい。何せハチの動きはせわしいし、雌蕊に着いた花粉が前からあったものか、今、着いた物かの判断は肉眼ではできない。
写真はハマナタマメの花に訪れたハキリバチの仲間。背中の上に雌蕊と雄蕊がある。
最近、ハナバチの観察をはじめた。もう、季節は終わろうとしているが南の島では11月頃までは可能だ。
もうひとつ、モダマの花も秋に受粉するらしいことが分かり、さらに詳しく観察したいと思っている。本来、モダマの花は熱帯では乾季の終わり、雨季のはじめに開花する。しかし、亜熱帯の石垣島では自生するE. phaseoloidesの花は一年中咲いたりして、そのほとんどが子房の発達をみない。自生しない種を栽培しても秋に花を咲かせる。そんなこともあって植物の性に興味を持ち始めた。
本から得た知識を再確認すると共に、モダマのように本には書かれていない性のシステムを少しでも理解したいと思っている。

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写真はハキリバチの背中に着いた花粉とハマナタマメの竜骨弁から顔を出した雌蕊。花とハチのサイズもあっているようだ。蜜をもらって花粉を運ぶタイプなのだろう。
しかし、ハキリバチにとっては背中に着いた花粉は自身では利用できないだろう。

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写真はデゥランタの花で吸蜜するアオスジコシブトハナバチ。
この花は花筒の中に雌蕊と雄蕊が収まっている。
ハナバチにとっては蜜を吸うだけの花なのかも知れない。
花は特別な形をしていない。
ハチの口吻辺りに花粉を託すのだろうか。あるいは別の昆虫に受粉を委託しているのだろうか。観察している限りアオスジコシブトハナバチが優占していて、他にはホウジャクが訪れる。ホウジャクはホバーリングして花には止まらず、これもまた長い口吻で蜜を吸う。
しかし、結果としては受精して多くの実を着けて鳥によって散布され周辺で発芽が確認されている。花粉媒介者や具体的な受粉システムは分からない。
植物自体は園芸種である。

我が家の庭にはデゥランタの木が数本あっていずれの花にもアオスジコシブトハナバチが多く訪花する。それでは他の場所の多種の植物ではどうだろうかと調べてみた。

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園芸種で名前はまだ調べていない。(どなたか分かりましたら教えてください)
この花にも多くのアオスジが訪花していた。


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アオイ科の花で一般的なハイビスカスとは少し異なる園芸種。大型の花なので受粉にはあまり役にたたないと思われた。吸蜜オンリーなのだろうか。

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自生種ホウライカガミに訪花した同種。ホウライカガミは地味な花だが各種の昆虫が集まる。他のハチ類やチョウも来る。海岸の植物では他にこの時期、クサトベラ、ハマボウ、アザミ、ハマナタマメなどに訪花していた。
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園芸種のランタナ。オレンジ色や赤色の品種に多くピンク色には訪花が少なかった。この花にも他のハチやチョウがよく集まる。

海岸の自生種の花ではハマナタマメに本種とハキリバチが共に訪花するが、ハマセンナの花はハキリバチが優占する傾向が見られた。

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写真はハマセンナに訪花したハキリバチ。

今の季節では、これらの花とハナバチの関係が観察できた。当然、花は季節によって咲くのでこれからも観察を続けなければならない。
ハチによって好みの花もあるようだし、花だけでなく「場」の優占行動も興味深い。
また、吸蜜を主な目的とする花や花粉を目的とする花もあるようだ。
集団(社会性)を作らない単独ハチの違いも考慮しなければならないだろう。

もともと、今回「ハナバチと遊ぶ」を書き始めたのは研究のためではなく、ハナバチの形やポーズを記録資料に使うためだ。
これまで撮った多くの写真はピンボケであるが、むしろ動きが止められていて参考になる。でも綺麗に撮れた写真を載せようと考えた。

やがてモダマのE. parvifolia が咲きそうで、その訪花昆虫に視点を変えるが、台風の襲来が無いことを願う。



# by modama | 2016-08-31 11:57 | Comments(0)
2016年 05月 21日

続・モダマを追って旅するアジア、再びタイ北部へ。

最近、ブログの更新をおこたっている。昨年暮れから今年はじめにかけて行ったインドネシア
ナツナ島、ジャワ島のことは書かずじまいだった。今回は4月に行ったタイ北部、チェンダオとウインパパオのことを少しとはじめて乗った路線のエアーチャイナのことを書こう。
これまで石垣島から東南アジアへ行くには、まず、那覇に出てそれから台湾トランジットか
羽田、成田、福岡経由、もしくは仁川経由だった。今回は、はじめてエアーチャイナを使って
那覇から北京、チェンマイ行を利用した。勿論、料金が安いこともあるがバンコク経由だと
乗り換えてチェンマイへ行くので、直接行けるこの路線を試してみた。前に便の予約をして
料金を払っておいたが、座席の指定はしなかった。ところが当日発券された席は3列目でビジネスクラスだった。
那覇・北京も北京・チェンマイもそうで、あんな安い料金でほんまかいなと思った。
帰りはエコノミーなのだが・・・これでエアーチャイナの実態を知った。
チェンマイ空港から北京に向かう便に乗る時、夜遅い便なのに早くに空港へ着いてしまった。
結果的には、それで良かった。と言うのも搭乗手続きの列が遅々として進まない。
荷が多いことと手続きにトラブルが多い。
沢山買い込んできたマンゴーが持ち込めないことを知るとその場で食べている人もいる。
一人が数人のチケットを預かり、カウンターで指摘されてみんなを探しに行く人もいる。
なんだかんだで手続き完了がすすまない。
列の最後の方だった私が、荷を預け発券してもらって搭乗口につくとまもなく搭乗が開始された。
出発時間の45分ぐらい前だった。小さな飛行機だから普通15~20分もあれば着席できるのだが・・・
はじめて座るエアーチャイナのエコノミークラス。席は5列目の通路側、私が席に着いてまもなく3列目の通路側の席に曙のように太った西洋人が座った、いや、正確に言えば座ろうとした。
しかし、席にお尻が入らない。それと同時に隣の席にいた人がアテンダントに猛烈に抗議しだした。
「席を変えてくれ !!」それは無理からぬことだが、この席替えをきっかけに周辺の人も席替えを要望しだした。
アテンダントは皆を統制するのに長らく時間を費やした。まるで、小学生の修学旅行より始末がわるい。それだけではなく周囲の人は太った西洋人を指さして笑うのだ。かなり後ろの席からもわざわざやって来て嘲り笑う。今度は西洋人が堪り兼ねてアテンダントに抗議をしだした。
しかし、彼女たちにはどうすることもできない。
一時は乱闘でも起こるのではないかと見ていたが、多勢に無勢の西洋人は我慢した。
何しろ周辺の席は、みんな同じ村から来たような客なのだ。
結果的には、隣の席の人が最前列の搭乗係員の席に移るのと数人がそれぞれ席の交代をしておさまった。
飛行機が離陸したのは定刻の30分過ぎだった。
でも、興味深い出来事は飛行機が飛び始めてからも続いた。
私の席の通路反対側には、窓側の席に太った若い妻と真ん中の席に痩せた夫、通路側に祖父と思われる三人が席をとり、はじめは妻が子供を抱いていた。
すでに歩ける子供であるが席は確保してない。
次第に抱っこが辛くなった太った妻は隣の夫に子供を預けた。
寝付いた子供を今度は夫婦二人の膝の上にしばらく寝かしていたが、この子が太っていて重い。
そこで、祖父は考えた。まだ、シートベルトの着用ランプが点いているのも気にせず、
前座席のテーブルを出してブラケットを敷き、その上に子供を寝かせたのだ。
さすが年の功、発想はいい、と言うか規則を無視しているが思い付きはいい。
何度かアテンダントが通路を通り軽く注意はしたが、まったくの無視。
相手が子供の事となるとアテンダントも強くは言えない、結局、黙認となる。
テーブルの上に寝かせた子供は、股空きパンツ(パンツを履いたまま大小自由にできる物)を履いている。
当然、仰向けに寝かせた子供の股間からはオチンチンが飛び出す。
それを祖父は、さも愛おし気に向きを変えたりしている。
やがて、もう一枚のブラケットを掛けて、子供は安眠、で一件落着かと思いきや、
シートベルト着用のランプが消えると前の席の人がリクライニングにしたものだから、
折角のベットが傾く、今度は妻と夫の席でベットを作り直す。
その間、祖父はずっと通路に立っていた。
アテンダントが通る度に、祖父を避けたアテンダントのお尻が私の肩に触れる。
それは、まぁいい、許す。狭い通路で二人がすれ違うのだから反対側の席に影響がでてもしかたがない。
いや、ずっとそのままでも良い。
それにしても、こんな機内風景を体験したのは、はじめてである。
普段は退屈な飛行時間もこんな事があると観察していて楽しい。

あぁっ、モダマの話だった。
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今回、チェンマイ北部のチェンダオで使った宿。立派な三階建ての入口、実際に宿泊したのはここを通り抜けて山の斜面にあるロッジ。客はいないが環境は良い。一泊800Bにしてくれた。テラス付きのロッジを一人で使えるので値段的には安い。それよりなにより、この敷地内
にモダマが何本も自生しているのだ。今回は花を調べる事だけが目的だった。
まだ乾季の終わりだが雨も降らず大地はからからなのに幸い花は咲いていた。

つぎに宿泊したのは、同じチェンダオでも街を挟んで西側の温泉のある地域。
飛び入りで使った宿はドーダオドイ、女将にモダマを探しに来たと話すと近所の女の子を電話で呼びつけ、ジイチャンと四人で現場に行くことになった。オートバイで1分、呼び出した女の子はモダマ自生地の土地(山)の所有者の娘らしい。花と莢があって女の子が一生懸命莢を採ってくれようとしたが、手短にあった小さな物ひとつと花のサンプルをいただいて用事は済んだ。
写真は女将の旦那と二人で。1泊500B。

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彼の手作りのロッジ。まるで日本人みたいな人だった。
用事が早く済んだので、オートバイを借りて周辺の森を巡った。火入れの済んだ林でソリザヤノキの種子を沢山拾う。気温37~40度、暑い。くたくたになって森から戻り温泉に入る。川で水浴びをして、温泉に入るを繰り返した。夜はタイのライスワインひと瓶をいただく。
帰りしなバイク代とワイン代を聞いたらいらないと言う。バスターミナルまでバイクで送ってもらう前に女将にそっと200B渡した。ありがとう。


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写真はEntada rheedii の花と葉。これが広域種の一般的な花だ。

その数年前にチェンダオとウインパパオを訪れたDr 高橋敬一氏から両地の種子を頂いた時、
これは違うと直感的に思った。
昨年、彼とウインパパオの山中の村に行ったが残念ながら花の時期ではなかった。
それで、今回再度のタイ行となった。
事前にタイの天気を調べたが一向に雨は降らず、花が咲いているか心配だったが、からからの
大地に雨季を見込んで花は咲いていた。
その後、一旦チェンマイへ戻り、ウインパパオへレンタルバイクで向かった。
快適な国道から、海抜1300mの山中の村へ向かう険しい道を登って村に入った。
今回、幸いなことに両地域の花を比較することができた。それは前のページでも載せた。
昆虫と違って植物は、同定が大変だ。
花、葉、莢、種子を調べなくてはならない。花と種子は時期が異なる。特に花の時期は短い。
標本では小さな花を乾燥した物で精査することが難しい。
そんな事で再びのタイ行となった。
写真は、ウインパパオのE. rheedii の花と葉。

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# by modama | 2016-05-21 15:42 | Comments(0)
2016年 04月 30日

タイ北部山地 Wiang Pa Pao 産Entada と中国雲南E. rheedii sinohimanensisの 比較検討

次に中国雲南産 E. rheedii の標本とタイ・Wiang Pa Pao 産を比較する。
下写真は雲南のE. rheedii sinohimarensis 。
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標本写真からE. r. sinohimarensis は広域種のE. rheedii に比べ小葉が小型で先端が鈍頭の
傾向にあるのが分かる。花軸は枝分かれする。また、標本では確認できないが記載文では
花のがくに微毛を有することが書かれている。
以下、タイ北部山地Wiang Pa Pao 産のEntada は次のようである。

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花のがくには黄色い微毛が密生する。

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花軸が枝分かれして多数つくことが分かる。

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小葉は小型で卵形にちかく鈍頭から鋭頭までの変異がある。
これらの比較からタイ北部山地のWiang Pa Pao産 をE. rheedii sinohimarensis
の新産地とした。

今後、アジアにおけるEntada 属分布図をより詳細に作成するにあたり、下図のような
境界をさらに検討しなければならない。
B線は、E. rheedii とE. rheedii sinohimarensis の境界。C線は、E. rheedii sinohimarensis
とE. rheedii とのE. tonkinensis の境界。現在、E. tonkinensis の分布地は、屋久島、奄美、
台湾北、中部、福建、広東、広西、雲南、ベトナム北部、などとされているが、ベトナム中部
Aluoi の扱いなど検討しなければならない。


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# by modama | 2016-04-30 08:13 | Comments(0)
2016年 04月 26日

タイ北部山地に見られるEntada属二種の検討

タイにおけるEntada属は、南部半島部に分布するE. spiralis,中部東北部のE. grandulosa,
E. reticulata,広域種のE. rheediiが知られている。Chiang Mai近辺からは、莢が螺旋状になる個体群が知られ、それをE. spiralis扱いにして来たこともあった。しかし、その詳細についてはこれまで報告がない。
筆者は、2013年5月にChiang DaoとWaing Pa Paoに訪れた高橋敬一氏より当地採集のモダマ種子とデータをいただいた。それを見て二地域の個体群は別種ではないかと推測した。それで自ら2015年5月にWaing Pa Paoに赴き莢と葉を10地点で確認した。莢は螺旋状を呈し、葉はやや小型で、小葉先端部が鈍頭であった。広域種のE. rheediiは変化に富むが鋭頭のものが多い。
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写真は、Waing Pa Pao地域に共通する莢と葉の形態。

この年、種子、莢、葉は確認できたが、花は時期では無かった。
そこで再び2016年4月16~23日にかけてWaing Pa Pao,Chiang Dao地域の調査を行った。
Waing Pa Paoでは、昨年確認した自生地10地点以外に3地点を追加し、種子、莢、葉、花を調べることができた。確認地点の分布海抜は975m~1300m程であった。花は以下のようである。

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続いて、このタイプではない広域種のE. rheediiがどのあたりから分布するかを調べるため国道118号線チェンライ県、チェンマイ県境の峠からチェンマイ方面に向かって確認したところ前種とは数百mしか離れていない県境手前の場所から3地点共にE. rheediiであることが分った。その地域での莢、花、葉は以下のとおりである。


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これらはWaing Pa Pao西方のCniang Daoの個体群と同じ広域種のE. rheediiである。ちなみに今回の調査では、Chiang Daoでも2地域で8地点ほど調べた。つまり広域種タイプは合計11地点になる。

現地で撮影した花や標本を持ち帰り詳細に検討したところ、Waing Pa Paoに分布する種群は花の形態においても葉の形態においても広域種のE. rheediiとは異なる事が分かった。
以下は花の拡大写真である。

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写真上がWiang Pa Pao産、下が広域種E. rheedii

両個体群の花を比較すると次のようなことが言える。
○E. rheedii 花軸の長さが20~31cmであるのに対し、15~18cmと短い。
○E. rheedii 葉腋から花軸が1~数本なのに対し、ほとんどが複数である。
○E. rheedii 花軸は一本が多いのに対し、枝分かれすることがある。
○E. rheedii 花軸、がくが無毛なのに対し、褐色の微毛が多数見られる。

検討
上記のような花の形態から検索するとFLORE DU CAMBODGE, LAOS, VIET-NAM I. NIELSEN 1981によるとE. rheedii subsp. sinohimalensis Grierson & Long に近いことが分かった。
その記載では、
TYPE : Wallich 5294 A. Nepai
Sous-espece du Nepal, Sikkim, N,E, de Inde, Bangladesh, sud de la Chaine(Yunnan),
de Birmania et du Laos, en altitude jusque vers 1300m
となっている。
ここでは、タイ北部は分布地として記載されていないが、新産地の南限と考えてよいようだ。

また、莢の形態からE. spiralis との比較をするならば、螺旋形の莢形態は中国雲南及びラオス・ムアンゴイにおいても筆者は同形態の莢を観察している。これらはE. rheedii sinohimalensis
の分布域であるため個体もしくは地域変異と考えてよいのであろう。
その裏付けとしては、Flora Malesiana ser. I, Vol. 11(1) (1992) のE. spiralis 図版には花の
がくに微毛はなく、分布地域的つながりなども考慮するとタイ北部山地に分布する個体群は
E. rheedii sinohimalensis であろうことが示唆された。


# by modama | 2016-04-26 12:53 | Comments(0)
2016年 01月 25日

インドネシアのモダマの名前

昨年二月にスリランカ、インドネシアを廻った。その時、インド洋に面するジャワ島中部の
Pangandaran でモダマを探したが見つからず、ガイドの青年がインドネシアでのモダマの呼び名は「Peundeuy」(プンドゥイ)だと教えてくれた。
昨年十二月にBogor 植物園の説明板には「Pohon Tarzan」(ターザンの木)と書かれてありがっかりした。それからジャワ島の西の端にあるT.N.Ujung Kulon へ行った際、国立公園でレンジャーをしている男性に二個のモダマ種子をもらい名前を教わった。
P.Panaitan 島には自生していて自分たちは「Gong seng」と呼んでいるとのことだった。少なくともこの地域ではこの呼び名が正しいのだろう。インドネシアにはE. rheedii とE. phaseoloides の二種が分布していて、いただいた種子の種が判断できない。おまけに両種の特徴を兼ね備えている。印象ではミャンマーのベンガル湾側のモダマ種子に似ている。ミャンマーではベンガル湾側とタイ国境付近とでは種子形態に違いが見られる。また、自生地の気候も異なる。アジアにおけるモダマ拡散の二つのルートが示されている気がする。

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# by modama | 2016-01-25 15:08 | Comments(0)
2015年 12月 09日

Entada phaseoloides の石垣島における開花期

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石垣島でのヒメモダマ E. phaseoloides の開花期は5~12月である。最も盛んなのは6月で良い香りを放つ。しかし、これまでの観察では雌蕊が形成されず、結実したことがない。莢の成熟するのが7月頃なので、成熟期間を考えると6月に開花した花ではないことが分かる。それではいつに開花した花が結実成長するのだろうか、というのが長い間の疑問だった。
以前の観察例からすると11月に咲いた花に雌蕊が見られ、12月に小さな莢が着いているのが観察されている。すると晩秋に開花した花が受粉して、翌年の7月に莢が熟すのだろうか。
今年は夏に二度大きな台風に見舞われ、その後の開花はあるか心配であったが、昨日、開花を確認して雌蕊の有無を調べたところ、赤い子房ができていた。上の写真の赤く見える部分が子房、雌蕊は多数ある雄蕊にまぎれて見えずらい。

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開花後日数がたって雄蕊がしおれた花を見ると子房と雌蕊が良く分かる。一本の花序にかなりの数の花があるにもかかわらず、受粉して莢を作るのは数十本に一本、もしくは百何本かに一本なので成長過程を見届けるのは難しい。4~5Cm に莢がなったものをこれまで気づいてきた。
これまで4年かかったが、どうやら11~12月に開花した花が翌年7月頃、莢を成熟させるのであろうことが分かった。しかし、東南アジアのE. rheedii は、温暖冬季乾燥気候地域で乾季の終わりに花を咲かせ、雨季の終わりの秋に莢が成熟するのと比較して、石垣島での開花期は気候システムの中でどのように決定しているのだろうか。まだ、まだ模索は続きそうだ。

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# by modama | 2015-12-09 09:53 | Comments(0)
2015年 11月 05日

Entada 属分布上限の地域差の検討

石垣島のE. phaseoloides 分布上限は海抜100m程であった(深石、2014)。アジア大陸(ユーラシア大陸)では
1300m ~1800m であった。その違いは、アジア大陸において高度上昇に伴う生育気象の限界と推測した。石垣島においては、Entada 属の北限に近い大陸島に海流散布されたE. phaseoloides の渡来時代と既存の植生との関係が示唆された。分布上限の海抜100m 辺りには旧汀線が存在し、それ以下(海抜80m)には琉球石灰岩(生成年代13~20万年前)が、それ以上にはブナ科植物の極相林が存在する。旧汀線が島の隆起に伴い極相林との間に作り出したニッチには現在も、モダマ、サガリバナ、サキシマスオウノキ、ナンテンカズラ等、南方系海流散布植物が自生していることを示した。
もし仮にそれら南方系海流散布植物が現汀線から自生地を拡大して山を登ることが自由にできるのであれば、何故、モダマの分布上限は海抜100m を示すのだろうか。上方には大陸と陸続きであった時代からの極相林があるからであり、大きく重いそれらの種子は傾斜を上がって分布域を広めることが不得意であるからだろう。石垣島の気象では、海抜200~300m はモダマにとっては生育可能な気象であるにもかかわらず、現在の島の植生が形成されたのには理由があるはずである。

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図は大陸内陸部で隆起する地形におけるEntada 属の現在の分布上限を表した。各地によって気象条件は異なるので分布上限は1300~1800m として現れている。


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石垣島の地形と地質を表した図。島の左右は琉球石灰岩から成る段丘、中央低地の沖積層はブネラ海成粘土層を含む。海抜100m 以下にモダマ、サガリバナ、サキシマスオウノキなどが自生する。上部にはブナ科植物の極相林がある。


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台湾墾丁におけるE. rheedii の分布上限は○の位置である。水色の部分は更新世に形成された恒春石灰岩、それを取り巻く基層は晩期中新世~更新世に形成された墾丁層である。○の地形は海抜200~300m のカルスト地形でかなりの浸食が進んでいる。露出した石灰岩地帯にモダマは自生している。根○許(1986) によると恒春半島の隆起速度は更新世後期0,6~1,14mm/yrで、加速進行しており全新世では2,2~3,5mm/yr とされている。なお、E. phaseoloidesの自生地牡丹県高士では分布上限が200~250m 辺りである。


# by modama | 2015-11-05 10:53 | Comments(0)
2015年 11月 02日

Entada 属(モダマ)分布拡散の検討

島で暮らす人々にとってモダマは海流散布された植物だとする印象が強い。しかし、モダマ属全体の分布域を展望すると広い大陸での広がりもある。大きく重い種子であるモダマは基本的に重力散布(種子はすべて)であるが、風や水の流れ(水散布)など加わり現在の分布域がある。例えば島に漂着する種子も季節によって量の変化があり、その一因は季節風である。南西諸島では10月ごろから吹き始める北東の風によって、島の北側東シナ海を北上する海流(黒潮)によって運ばれた種子が吹き寄せられ島の海岸に漂着する。海流と風の共同作用ということができる。
海の無い大陸内部では、斜面での落下や雨水と河川の流れが主に種子を移動させる。ここでは地形と気候が重要な要素となる。
アジアに分布するモダマ属は、アフリカにおいてツル性で種子が大きく浮力を有したE. gigas から分化したE. rheedii を祖先とすると考えられるが、さらに遡ればアフリカに現在も自生する灌木性で種子の小さな祖先から進化したと思われる。これらの種は莢の内果皮も薄く、種子の種皮もさほど厚くはなく、海水や長期の漂流には耐えられないように思われる。アフリカ大陸内で拡散したのは比較的なだらかな地形と年ごとの乾季と雨季、あるいは気候が定まらない時代であれば、突発的な雨によって起こる一時的な氾濫原によって分散したのであろう。サバナ気候の原野を想起してみれば斉一的な光景が想像できる。地平線の彼方に湧き上がる雨雲が稲妻を伴い通過した後、ところどころ灌木の姿がある草原は一面の浅い湿地となり、時間と共に水が引いていく。その時、一方向に水が流れる小さな溝があれば、長い年月をかけて開析され河川となるが当初は比較的閉鎖的な溜まりとなる。その間、地表に散乱していた種子のうち浮くものは漂い、浮かぬ種子も十分な水分を含み発芽の準備ができる。数日後あるいは数週間後、雨水が干上がると大地ではいっせいに発芽がみられ草本は成長して開花する。その時、草本であれ灌木であれ、種子は移動の機会を得る。
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灌木性モダマ、Entada polystachya 種子直径1cm,莢(分離節果) 5×1,8cm 
分離節果(内果皮)は薄く、種子は小さい。風にも飛び、莢は一時的に水に浮くが、長時間の水散布は難しいと思われる。(写真の種は、中米産)


こんなサバナ気候の比較的なだらかな地形も長い年月を経るうちに溝は小川となり、河川となり谷ができ、浸食によって険しい地形へ変化していくことであろう。また、一方で地下では隠れた巨大なエネルギーによって大地の隆起をもたらすかも知れない。逆に大地が引き裂かれ溝地を形成するかも知れない。いずれにしろ砂漠のような過酷な環境でない限り地形は植生によって覆われつづけ、多様な地形には多様な植生が形成される。
そんな中、水事情の良い谷間や平地では樹木が陽光を求めて競合する。他の樹木をだしぬいていち早く明るい樹冠に達し、光合成を行うために自らの樹幹に使う資源を上へ上へと伸ばすことに特化したツル性植物は、そんな環境で進化したに違いない。ツル性モダマもその一例で、大きな種子は暗い林床で長い年月発芽チャンスを待ち受け、好条件を得ると一気に樹冠の陽光をめざして成長するエネルギーを種皮内の双葉に蓄えた結果なのかも知れない。種子浮力は長い時間林床で胚を小動物や菌類から守る丈夫な種皮と双葉との間隙によって得られている。やがて海水にも長期漂流にも耐ええる種子形質が海流散布をもたらした。
ここではアジアへ進出したモダマの起源であるアフリカを例に解説したが、この地形と植生の変化は何もアフリカでだけ起こったものではない。ネオテクトニクスによる造山活動がまだ地上においてそれほど活発ではなかった時代にアジア大陸に漂着したモダマは、初期、比較的なだらかな地形で同様な分散をしたのであろう。しかし、その後もつづく地形の変化は止むことなく激しいものになった。大地の隆起作用はモダマ自生地を高みへ押し上げ、河川による水散布は生育気温の可能範囲内で分散を試みた。急峻な峡谷から盆地へ、そして河川下流域の氾濫原へと広まりデルタ地域や汽水域から海洋へと種子は散布しつづけられた。
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赤い点線はアジア大陸におけるE. rheedii もしくはその祖先種の分布拡散。
黒い点線は現在のE. phaseoloides の分布域。(ここではE. tonkinensis をE. phaseoloides
系として扱った)
アジアにおいてE. phaseoloides はスンダランドの熱帯雨林気候地域でE. rheedii から分化したことが推測される。
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アジアにおけるEntada 属分布図。
A, E. rheedii (広域種), B, E. phaseoloides (広域種), C, E. tonkinensis, D, E. borneensis, E, E. spiralis, F, E. zylanica, G, E. grandulosa, H, E. reticulata, I, E. parvifolia

E. rheedii とE. phaseoloides では同じ広域種でも自生する陸域を考えるとE. rheedii の方がはるかに広い。種子浮力保有率の高いE. phaseoloides は島嶼に進出しているために分布図に描くと広く見える。
E. phaseoloides はスンダランド西側で分化し、東に分散し北赤道海流に乗った一部が黒潮に合流して北上したことが考えられる。パラオ、台湾、八重山、沖縄島の個体群がそれらで、沖縄島が北限になる。海流漂着種子としては本州各地でも記録され、一時的な発芽は九州で知られるが自生はない。一方、E. rheedii の海流漂着種子の記録は北海道まである。

アジアに進出したEntada 属を系統的に大きく分けると sect,Entada の中にsubsect,Entada
とsubsect,Sphaerospermae の2グループに分けられる(Brenan, 1967)。
この分類では、E. glandulosa, E. reticulata, E. parvifolia,3種がsubsect,Sphaeropermae に属し、他6種がsect,Entada に属すことになる。

私はアジアのEntada を考える上で、上記の分類を仮に手を加えてみた。
  subsect,Entada (A) E. rheedii, E. spiralis, E. zeylanica
           (B) E. borneensis, E. phaseoloides, E. tonkinensis
subsect,Sphaerospermae E. glandulosa, E. reticulata, E. parvifolia

subsect,Sphaerospermae 三種のうちE. glandulosa, E. reticulats の二種は大陸のサバナ気候地域で分化した個体であり、うちE. reticulata が海流散布のすえフィリピンでE. parvifoliaへ分化した。
subsect,Entada の(A)(B)は、現在さらに検討中である。




 


# by modama | 2015-11-02 11:49 | Comments(0)
2015年 10月 31日

モダマは山を登るか

傾斜地におけるモダマ拡散の検討

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傾斜地に自生したモダマが樹冠に達するとツルは明るい谷側へ多く伸びる。また、太く重く
なったツルは支えとなる木の枝が折れたりすると落下して再び這い上がる。全体的に見ると
元の発芽成長位置より斜面の下側に種子が散布される可能性が高い。
斜面に重力散布された種子は、雨水などによって流れ下る可能性が高い。しかし、斜面にも
凹凸があるため元株の周辺に残る種子もある。その確率は水に浮く種子より浮かない(沈む)
種子の方が多い。長い年月重力と雨水によるこれらの選択を受けると斜面の多い産地では沈
む種子が残り、浮く種子は水散布され下流域へ分布を拡散するようになる。
大陸内部でのモダマ種子は重力散布と水散布、それに長い年月をかけた地形の変化によって
拡散されたり、分断された結果として現在の分布域はある。


# by modama | 2015-10-31 14:37 | Comments(0)