2011年 03月 27日
今からおよそ30数年前、現在の工房の敷地にデイゴの木を植えました。 デイゴは成長が早く、みるみる巨木になりました。 春には、深紅の花を咲かせ、日中にはメジロが蜜を吸いに集まり、 夜にはオオコウモリが来ました。 もう、10年以上も前のことでしょうか、立松和平氏が娘さんと訪ねて来られた時、 我が家族と一緒にこの木の下で撮影したことが思い出されます。 立松氏は、 「物を作る仕事は、うらやましい。僕らの仕事は文字を織りなし文を作ることだけど、 その作業には具体的な実感が伴わない。手を動かし形が出来上がっていく仕事が羨ましい」 と言っていました。 確かに手仕事は、具体的な形が即生まれます。 しかし、それに至るまでの作業は、緻密な意匠計画や段取りが必要で、 言葉を紡ぎ文を作る作業と変わりはありません。 彼も幾度も自分の仕事の壁にぶちあたっているのだと、その時、思いました。 その彼も今では、亡き人となってしまいました。 デイゴの木も数年前から、石垣島で発生したデイゴヒメコバチの寄生被害が 酷くなり、花を咲かせなくなりました。 葉が瘤のようになり、樹皮が剥げ落ち、ついには枯れてしまいました。 なかなか切り倒すきっかけがなく、そのまま放置しておきましたが、 東北・関東大震災のニュースを見ているうちに、無性に「今のうちに切り倒そう」 という気持ちが湧き上がりました。 いつまでもそのままにしておくと、いつかは思わぬときに倒れ、 どんなことになるか分からないからです。 しかし、根回りが1メートルもあり、そこから4本もの幹(いずれもひと抱えほどの太さ) が四方へはりだしています。 一本は電線をからめるように枝が伸びています。 足場を組み、高所でチエンソウを使う作業は命がけです。 枝を切り落とす度に、地響きをたて落下していきました。 枝や幹を細切れにして、片付けるのも大変な仕事です。 短いけれど鋭いトゲがあるからです。 数日がかりで、やっと、切り終えると辺りの景色が一変しました。 これまで、工房の敷地にあって、ずっと共に過ごしてきたデイゴ・・・ でも、すべてのものは、いつか最後を迎えるのです。 と同時に新しい芽生えもあることでしょう。 「和平さん、仏教用語で何と言ったっけ・・・」 栃木ナマリの彼の声が聞こえます。
by modama
| 2011-03-27 09:45
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