石垣島便り

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2012年 10月 29日

ホタルの死に場所

石垣島では、毎年、10月になるとオオシママドボタルが光り始める。
そして、その頃から、ミイニシと呼ばれる北風も吹き始める。
秋から冬の1月頃まで成虫が光るこのホタルは、群れて飛ぶことも無く寂しげなホタルだ。

今年は、台風の襲来で10月には一度、島の木々の葉が落ちた。
そのせいで、いかにも秋の訪れを感じさせる。

そんななか、いつものように姿を見せ始めた。
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このホタル、昼も夜も活動する。
飛び方は不器用で、赤い腹を反らして、黒い前翅をひろげゆっくりと舞う。
風の強い時などは、あらぬ方向へ飛ばされる。
何とも頼りない。
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私の家の庭にも飛んでおり、季節には日常的に見ることができる。
昨年は、某テレビ局の旅番組で、庭のホタルを撮影して行った。
もちろん、夜だから、人の家の庭だとは分からない。
乗りつけられたワゴン車からゾロゾロっと多くの人が降りてきて、
ディレクターが挨拶すると、旅する主人公のイラストレーターとキャスターが
暗闇で「こんな所にホタルがいる」などとしらじらしく話して、
少しだけライトを照らし、後は闇を飛ぶホタルの光を撮って、
さっと引き上げて行った。
ものの一時間ほどだっただろうか。
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毎年、このホタルとは身近に接しているが、いつも不思議に思うことがある。
昼となく夜となく、よく私の部屋に飛んで来るのだ。
私がタバコを吸うせいもあって、部屋の入り口と窓はいつも開けてある。
こうやってパソコンの前に座っている時でも、ツーっと飛んで入って来ることがある。
べつに、とりたてて外に出してやることもなく、そのままにしておく。
(その理由のひとつは、ホタルは摘むと翅から白い液を出して死んだふりをする)
こともあるし、いちいち止まる場所を見届けて席を立つのもめんどくさい。
もちろん、留守の時や知らない間に入って来るものもいる。

それらが夜になって寝る時、電灯を消すと光って飛びはじめる。
床の中で見上げながら眠りにつく。
多い時には三匹ほどが同時に飛ぶこともある。
もちろん、寝る時は入り口は閉まっているので、昼間か夜に入っていたものだろう。
壁に止まって光るものもいれば、狭い部屋の中をゆっくり旋回するものもいる。
時には、螺旋状にめまぐるしく回転して飛ぶものもいる。
その飛び方は、日常野外ではあまり見ない。
狂おしい光の光跡は、死の舞とも思える。

そんなことが有る無しに関わらず、日中、部屋の床にはホタルの屍骸が落ちている。
まだ、生きてはいるが動きの鈍いものがいたりもする。
それらもやがては死ぬ。
そんなことがあって、この季節になると私の部屋はホタルの死に場所となる。
ホタルの寿命は短い。いつかは何処かで死ぬはずだ。
でも「何故、こうも多くのホタルが私の部屋で死ぬのだろうか」と不思議に思う。
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この写真は、5月に別の種類のヤエヤマボタルを撮ったものだ。
この年、ホタルの写真撮りに夢中になって1ケ月間毎日撮影に山へ出かけた。
オオシママドボタルが人里に生息するのに対して、このホタルは山で群生する。
光方も点滅して躍動感がある。
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それにしても、この年、この場所では大発生しており、
山の斜面がうねるように光っていた。
ひとつひとつの命が、光となって飛び回っていた。
大きさ5mm程の命だ。
ひと月の間、山の斜面を埋めた光は それぞれ短い寿命であるから、
羽化しては飛び立ち、そして死に、羽化しては死にを繰り返していたのであろう。c0023181_12241040.jpg
夜の森で光は見えるが死は見えない。
5mm程の命は、林床へ無数に落ちていったに違いないが、
それを見ることはない。
ただ、ただ、光だけが、光る命だけが人の目に見える。
それに対し、我が家の庭のホタルは私の部屋を死に場所としている。
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by modama | 2012-10-29 12:35 | Comments(4)
Commented by beachcomberjp at 2012-10-29 22:25
うわぁ~!めっちゃ幻想的ですね。
こんなの見たら、ハブがいても石垣に行きたくなります。
Commented by modama at 2012-10-30 12:09 x
すごいでしょう。たった30分から1時間の光のショーなんだけど、是非見に来てください。映画のアバターの世界が体験できますよ。
Commented by mmerian at 2014-01-11 21:12 x
はじめまして。
しげさんの弟子??で宮崎でモダマを拾っているmmerianです。
このホタル、いつか見に行きたいです!!!
秋の学会にも参加したいです。
Commented by modama at 2014-01-12 22:15 x
宮崎のモダマさん、はじめまして。
学会の開かれる11月には、淋しいホタルが飛ぶ時期です。
夜の「ジャンケン大会」は欠かせないでしょうが、
街から少し離れて郊外へでかければ、きっと見られるでしょう。


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