石垣島便り

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2012年 12月 01日

モダマ(チビモダマ)の系譜

通称チビモダマと呼ばれているのはアジアに産するEntada glandulosa,Entada reticulata,
Entada parvifolia の三種のことだ。その中でもフィリピンに分布するE parvifolia は「ヒメモダマ」と言う
和名がつけられている。他の二種には和名がないのと、これまであまり知られておらず、
区別も難しかったので、もっぱらチビモダマとして通称で扱われてきた。

日本の海岸(本州中部以南)に漂着するチビモダマに「チョコモダマ」「ドロップモダマ」と、
やはり通称が付けられていたが、ドロップ型の漂着モダマを2010年西表島で拾い蒔いたところ
発芽・成長した結果、E parvifolia であることが分かった。つまり、フィリピンにだけ産する種で
あるから、流出地がはっきりしたわけだ。一方、チョコモダマの方は、いまだ手がかりはない。
同種の地域個体群変異種子ではないかと想像しているが、まだ、確かめられていない。

今年三月にE reticulata の産地に行って種子を入手し、吸水、発芽、休眠、浮力等を調べ学界で
10月に発表したので、チビモダマの系譜について書いておこう。
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写真は左がタイ産E glandulosa,右がラオス産E reticulata,中央下がフィリピン・ブスアンガ島
産E parvifolia,共に種子の大きさは直径0,8~2,5cmぐらいと小さい。

アジアのモダマ種子では、この三種がもっとも小さい。アフリカ、中米には小型種子を着けるモダマ
はあるが、多くは潅木性でツル性ではない。
アジアにおける小型種子を付ける三種の系譜を調べることにした。
脇田、立石らがDNAによる系統解析をした結果、アジアにおけるこれら三種はいたって近縁で
あることが分かっている。それでは、どのように分化、分散していったのであろうか。

浮力テスト

一部が日本の海岸にも漂着することから、種子は水散布・海流散布するであろうことが予想される。
E parvifolia は、日本にも海流散布さているので種子に浮力のあることは立証済みである。
そこで、カンボジア産E glandulosaとラオス産E reticulata 種子を水に浸してみた。
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カンボジア産E glandulosa 種子の浮力は9,9%しかなく、浮いた種子の中には小葉(種皮の中身)が腐植しているものもあったので、ほぼ浮かないと考えてよいであろう。
ラオス産E reticulata は、83,5%の浮力があった。沈んだ種子を発芽させたところ、浮く種子より
も早く発芽した。これらは、ほぼ浮くと考えて良いであろう。
一方、タイで採集されたE reticulata の浮力テストで浮くものが14%という情報もある。
種子浮力は地域によって差があるのかも知れない。
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左の図は、E glandulosaとE reticulata の分布域である。
浮力を持たないE glandulosa は、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、ミャンマー(一部は人為による持込もあるとして)に分布し、一方、その分布範囲内のラオス、カンボジア、タイの一部に
E reticulata は分布する。そして、種子は浮力を有する。
そこで、E reticulata の海水耐性を調べてみた。

○2012年5月25日、20個の種子を真水に浸す。(これは、分布地が海に面していないため)
○6月4日、20個とも海水へ浸す。
○7月3日、20個のうち5個を海水より取り出して、発芽処理(今回、考案した種子吸水法で、ヘソの部分に加熱する)
○7月5日、吸水はじまる。7月7日、4個の種皮が破れる。7月15日、5個目の種皮も破れた。
(その後、すべて発芽した)
○8月11日、海水中の残り15個中、10個を取り出し発芽処理した。8月12日、吸水きじまる。8月14日、3個の種皮破れる。8月15日、7個の種皮破る。
(その後、すべて発芽した)
○9月11日、海水に浸した最後の5個を取り出し、発芽処理した。
○9月15日、すべての種皮が破れた。
(海水耐性テストした20個の種子中、3個は発芽前に種子内部観察のため使用したが、残りすべてが発芽し、生育した)

このように真水で約10間、海水で3ケ月間浸っていても浮力に変化は無く、発芽能力のあることが分かった。

このテストから、現在、ラオス、カンボジア、タイに分布するE reticulata が(と言うか、その祖先種が)、古い時代に海流散布されてフィリピンへ渡り、長い年月をかけてE parvifolia に分化したのではないかと示唆された。
現在、フィリピン産E parvifolia は、種子が漂流して南西諸島の島々や本州中部以南の海岸にも黒潮の影響で流れ着いている。斉一説を持ってすれば、現在のフィリピン~南西諸島への種子漂着は、
過去において、同様に浮力、海水耐性を兼ね備えたE reticulata も、インドシナ半島~フィリピンへ漂流することは可能であったはずである。いや、もしかすれば、現在も行なわれているのかも知れない。c0023181_1175799.jpg

アジアにおける小型種子を着けるEntada 三種の系譜は、E glandulosa,E reticulata,E parvifolia
となるが、浮力の観点から考えるとEntada 属種子の浮力は、変化していることが窺える。
もし、Entada 属のオリジンをアフリカとすれば、浮力を得たEntada gigas,そしてEntada rheedii と引継ぎ、東のアジアへ伝播、大陸内部で、言わば陸封されたE rheedii sinohimalensis
が浮力を喪失、E rhedii は各地域で浮力率の違いを示している。
一方、島嶼へ分布を広げたE phaseoloidea は、高い浮力率を有している。

これらのことからモダマ種子の浮力喪失は、遺伝的なものだけでなく環境による選択も強く受けていることが示唆される。

そして、種子の浮力は長い年月の間に、獲得したり、喪失したりしてきたに違いない。
特に、モダマの種子浮力は、内部的に非常に微妙なバランスの上に成り立っている。
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写真は、E parvifolia の花と蕾、ツル。葉の形もE reticulata とよく似ている。
漂着種子を発芽させた際、実生苗のうちは、葉の形、枚数が定まらず種の確定は難しい。
少なくとも二年ぐらい成長しないと種の特色が分からない。
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E parvifolia の莢、節果間のくびれが無いのと、やや幅広である。
種子はE glandulosa がやや球形であるのに対し、E reticulataとE parvifolia はやや扁平である。
これまで見てきた種子の中には「チョコモダマ」風の形は無かった。

by modama | 2012-12-01 11:46


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