石垣島便り

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2012年 12月 13日

マメの解剖

「マメ」と「解剖」という言葉はミスマッチだな~。
でも、間違った使い方ではないらしい。
「解剖」の意味を調べてみると「生体に切開等を加え解体し、構造や組織を観察すること」とある。
「マメ」は「種子」であり、生きているから「生体」であるし、切って中の組織を
観察すれば「解剖」と言う事になる。
どうやら自分の頭の中に「解剖」というイメージが、
「ゴム手袋をしてメスを握り、内臓を施術する」と決めてかかっているようだ。
「植物解剖学」という言葉もあるらしいから、マメを切って、その中を調べるのも
「解剖」なのであろう。

今年は、随分、モダマの解剖をした。
モダマの種皮を切開しても、内臓は出てこなかった。
あるのは、子葉と胚だけ、単純なものだ。
それでも生命が宿っている。生きている。
種子はひとたび眠りから覚めると、胚が子葉の栄養を得て成長をはじめる。
やがて、種皮を破って根を出し、ツルを伸ばす。
ツルはみるみる伸びて、どんどん成長する。
一粒の種子、マメ、モダマが、緑の葉を広げる。
何時見ても不思議に思う。まるで魔法か手品のようだ。

写真は、モダマEntada reticulata の種皮を取り除いた「中身」子葉と胚。
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マメ類の中には、発芽して双葉(子葉)を展開するものとしないものがある。
モダマは双葉を展開しない。
まるで二枚貝のように地面で子葉を少しだけ開き、その隙間から根とツルを出す。
学術的には「地下子葉性」と言うらしい。

さて、「何で、マメの解剖をしたのか」と言うと、
なかなか発芽しないモダマ種子が、どうやって、あの丈夫な種皮を破って芽を
だすのだろう、と思ったことがはじまり。
普通、私たちが身近に接しているマメ、大豆や小豆、ピーナッツの種皮は薄い。
時期が適切であれば、水に浸しておくだけで、皮が破れ根が出てくる。
写真は、大豆の発根。
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種皮も容易く破れそうだ。

ところがモダマの場合、前にも書いたが、なかなか水を吸わない。
吸水しない限り、種皮が破れ発芽はしない。
「いったい、どうなっているんだ」と誰でも思わないだろうか。
思わない人もいれば、思う人もいて、ただ思うだけの人もいれば、物好きにも「解剖」
までして調べる変人もいる。

そう、どうせ変人のすることだから、マメばかりではなく莢まで暴いてみせよう。
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写真は、まだ緑色のモダマ莢の断面。
中の種子は大きくなっているが、まだ、熟してはおらず子葉の間にも隙間は無い。
それでも、そろそろ莢から栄養をもらうのが終わる頃。
莢からの栄養は、動物の子供と同じようにヘソの緒を通して受け入れる。
種子の緒の付け根がヘソということになる。
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ところが、その付け根とは微妙な位置にある。
モダマ種子を見て、ヘソと思っていたのは実は間違えで、
その横にあり、緒が取れると見えなくなる。
実際のヘソは見えないのだが、その辺りをヘソと呼んでいたことになる。
まあ、どうでもいいか。
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緑色の莢の表皮が剥がれ落ちる頃になると、種子も少しずつ成熟して、
子葉の間に隙間が出来るようになる。
でも、すこし時間がかかる。この時期を後熟期間と考えている。
後熟している時は、まだ、子葉も完全には固まっていない。
子葉の間に隙間はあっても、種子は浮かない。
後熟が終わって、結果、種子に浮力が有るか無いか決定される。
写真の手前は、種子の断面、隙間は空いているが、子葉はまだ柔らかく、浮かない。
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発見!!

今年、沢山のモダマ種子を発芽させたり、解剖した。
観察に便利なラオス産Entada reticulata の種子を入手したからだ。
発芽処理法も思いつき、それで処理すると種子をさほど傷めず、2,3日で吸水がはじまる。
それらの様子を観察してきた。
それで、ある日、破れた種皮を見て・・・???
疑問を抱いたことがある。
まず、種子の破れる場所が決まっていること、そこには何か仕組みがあるはずだ。
幾つもの破れ目を観察した。
「なんだろう」と思ったものは、下の写真で見れる。
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実際の種子は、直径1cmぐらいで、水を吸うと2cmぐらいになる。
だから、もしかすると写真の方が実物よりも大きいかもしれない。
種皮の破れたところに紐のようなものが見えないだろうか。(下の方)
それが種皮を一周していて、それに沿って破れているように感じた。
そのことをきっかけにモダマ種子の解剖がはじまった。

いろいろ試してみるうち、吸水して種皮が破れる寸前が、種皮に厚みがあり見易いことが分かった。
普通の乾燥した種子では、ほとんど見えない。
充分に水分を含んで、厚くなった種皮・・・そう、そう、若い種子もそうであった。
石垣島に自生するEntada phaseoloides のまだ白い種子を莢の中から取り出して観察もした。
同じ組織が観察された。
まさか、種皮の中にこんな組織があるとは、それも普段は見られず、若い種子と吸水して
破れる寸前にだけ見られる事には変人以外気づくまい。
それが下の写真と図。
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写真の方は、成熟した種子が発芽寸前の状態なので、胚が成長している。
一方、図の方は、白く若い種子なので胚は、まだ、小さい。
micropyle そばのhilum から種皮を一周して、胚の近くまで達している組織、
栄養を送る組織であろうものが見られる。
それに沿って種皮は破れた。

これらが、今年、新たに知った知見である。
10月に学会で話をした。
写真や図は、その時のものである。

by modama | 2012-12-13 10:37


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