2014年 07月 31日
Entada とMucuna の検討 今回ボルネオ・サバ州の旅では、二種類のモダマと数種のムクナに会うことができた。 帰国してから、写真とデータを整理し、既存の資料と照合して同定を試みている。 しかし、ボルネオの資料は少ない上に、地図すら正確なものが無い。 地名や要所はGPSで押さえてあるが、村などの地名は地図上では探せないのでグーグルアースにプロットするしかない。また、同定のための既存資料も不確かな感が否めない。 モダマで海抜200~677mの間で5か所見つけたものをE,borneensis としたが、その検討をした。 下写真三枚は海抜603mのはじめに見つけた自生地の花。 コタブル側の水系とトアラン側の水系が迫る尾根筋に自生地はある。近くで焼畑のための伐採が行われており、多くのツルが切られていた。 写真は一本の花穂の上側 花穂の下側、開花してから雄蕊の色が変わる。 花を裏側から見た写真(右下) E,rheedii は、葉腋から数本の花穂がでる場合があるが、この種はすべて一本だった。 下写真は石垣島産E,phaseoloides の花穂 以下、E,borneensis と思われる種の各部位をまとめてノートにした。 上のノートを見て、莢の形態がE,rheedii と違う事、種子形態はE,phaseoloides に近い事、 しかし、花はE,phaseoloides と比べて花穂が長く、子房の色なども異なることが分かる。 また、両種と葉の形が違うので別種であろう。 ちなみにE,borneensis の記述は「Flora Malesiana ser.Ⅰ,Vol.11(1)(1992)」にあるが、図版は無い。 アジアにおけるEntada 属の系統は、脇田、立石らがDNA解析によって制作したが、このE,borneensis は 扱われていなかった。この種を含めればアジアにおけるすべての種が含まれ、さらにE,spiralis の再検討をすれば、より完全なものに近づくと思う。 Mucuna は以下のようなものが観察された。 Nucuna は、世界で120種程記録されており、約半数がアジアに分布する。 ボルネオには、5種ほどが自生する可能性があるが、今回、確認したもので確かに同定できるのは、今のところ一種である。今後、検討を重ねたい。 M,pruriens は、いろいろな場所で自生していたが訪れた時期が、花、莢、等の時期ではなかったので、N氏 の写真を掲載する。メランカップ2013,12/14とバヤヤット2013,12/17である。 phot by nakaseko 葉の特徴は、クズマメ風で艶が無く、三出葉の下一対の主脈より下が、上の三倍ほどある。 アジアにおいて広域種で、薬の原料としても栽培されたので、各地で逸出して野生化いる。 今回確認したMucuna を大きく分けて、白花系と紫花系に分けると、ラナウ東のサンダカン方面に流れ下る水系とタンブナンの南シナ海側へ流れくだる水系で花が確認された。 ラナウ東のをまとめると以下のようになった。 一方、ラナウから南下してタンブナンへ至る道すがらでは、同じく白花系が花期を迎えていた。 莢はワニグチモダマに似るが、種子は赤茶系で黒の斑が入る。同一種かも知れない。 水系は変わってキナバル山からコタブル方面へ流れ、南シナ海へと至る地域。 phot by nakaseko ボルネオの森は、棘、棘、棘の森だった。人を寄せ付けない藪だった。でも少しだけ分け入った。 植物の生きざまを垣間見た。どんなに高い木でも、どんなに長いツルでも一粒の種子から育つ。 その種子の長い旅を遡って、今、熱帯の森の壁の前に立つ。小さな私。 誰かが橋を掛けた。その橋を今、私が渡る。ありがとう。 紫花系のMucuna 今回、花が咲いていて、古い莢も付いていたが、種子は見当たらなかった。 この莢は、昨年10月に熟したものが落ちずに残ったのだろう。 N氏の2013,10,6の写真では毛の沢山着いた莢が写っている。 花は見られなかったが、莢と種子が得られた。 ランプタンの村から谷間にある未舗装の道を車で遡った。やがて車の通れる道は途絶えた。 そこには、一家と来訪者が使うだけの小さな橋が掛けてあった。住まいの後ろにはクロッカー山脈がひかえ 人の手の入らない森が在った。私たちは。その家の前から引き返した。いつか、この橋を渡って訪ねてみたい と思いながら・・・・・。 今回の調査旅行でEntada borneensis に関しては、葉、花、莢、種子を入手でき同定することができた。 Mucuna では、M,pruriens は花期が12月頃の様であるが写真だけでも同定はほぼ間違えないだろう。 他には、白花系一種と紫花系一種の葉、花、莢、種子を確認できた。やがて資料と照合できる日がくるであろう。その他では、葉と莢、種子を得られたが花期ではなかった一種がある。 とにかく一度の調査旅行で、イノ・シカ・チョウをそろえるのは難しい。 以下には、N氏が撮影してくれた写真を参考に載せて、一時、幕を閉じたい。 (これは、上出しの紫花系と同一かもしれないが確認の余地あり) いずれも写真によるデータは13,10,6である。 今回の旅では、N氏に並々ならぬ協力をいただいた。また、T氏、M氏からも貴重な情報をいただき、この場を かりて御礼申し上げたい。
by modama
| 2014-07-31 13:21
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