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石垣島便り

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2015年 11月 05日

Entada 属分布上限の地域差の検討

石垣島のE. phaseoloides 分布上限は海抜100m程であった(深石、2014)。アジア大陸(ユーラシア大陸)では
1300m ~1800m であった。その違いは、アジア大陸において高度上昇に伴う生育気象の限界と推測した。石垣島においては、Entada 属の北限に近い大陸島に海流散布されたE. phaseoloides の渡来時代と既存の植生との関係が示唆された。分布上限の海抜100m 辺りには旧汀線が存在し、それ以下(海抜80m)には琉球石灰岩(生成年代13~20万年前)が、それ以上にはブナ科植物の極相林が存在する。旧汀線が島の隆起に伴い極相林との間に作り出したニッチには現在も、モダマ、サガリバナ、サキシマスオウノキ、ナンテンカズラ等、南方系海流散布植物が自生していることを示した。
もし仮にそれら南方系海流散布植物が現汀線から自生地を拡大して山を登ることが自由にできるのであれば、何故、モダマの分布上限は海抜100m を示すのだろうか。上方には大陸と陸続きであった時代からの極相林があるからであり、大きく重いそれらの種子は傾斜を上がって分布域を広めることが不得意であるからだろう。石垣島の気象では、海抜200~300m はモダマにとっては生育可能な気象であるにもかかわらず、現在の島の植生が形成されたのには理由があるはずである。

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図は大陸内陸部で隆起する地形におけるEntada 属の現在の分布上限を表した。各地によって気象条件は異なるので分布上限は1300~1800m として現れている。


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石垣島の地形と地質を表した図。島の左右は琉球石灰岩から成る段丘、中央低地の沖積層はブネラ海成粘土層を含む。海抜100m 以下にモダマ、サガリバナ、サキシマスオウノキなどが自生する。上部にはブナ科植物の極相林がある。


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台湾墾丁におけるE. rheedii の分布上限は○の位置である。水色の部分は更新世に形成された恒春石灰岩、それを取り巻く基層は晩期中新世~更新世に形成された墾丁層である。○の地形は海抜200~300m のカルスト地形でかなりの浸食が進んでいる。露出した石灰岩地帯にモダマは自生している。根○許(1986) によると恒春半島の隆起速度は更新世後期0,6~1,14mm/yrで、加速進行しており全新世では2,2~3,5mm/yr とされている。なお、E. phaseoloidesの自生地牡丹県高士では分布上限が200~250m 辺りである。


by modama | 2015-11-05 10:53


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