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2012年 11月 17日

月・陽・星の砂

石垣島に住んでいても、毎年、西表島へ一週間から10日間ぐらいはキャンプへでかける。
西表島はぐるりと海岸線を廻ったり、横断したりもしたが、
一番のお気に入りは、何といっても鹿川湾だ。
湾を取り巻く環境は、険しい断崖で、湾奥と廃村跡側に僅かな砂浜がある。
西表島の中でもここだけが陸路で繋がっていない。
それだから、行くには長い距離、海岸線の岩場を歩いていくか、
山越えをしなくてはならない。
山越えといっても、到着地点の集落、船浮までのコースは、
川を越え、海岸線も歩かなくてはならないので潮の干満に合わせなければならない。
海側、山越え共に片道約1日のコースだ。

最近は、足の速い船が普及したので、チャーターすれば1時間程で行ける。
ただ、船を停泊させられる安全な場所が無いため、送り迎えになる。

若い頃には、海岸線も山越えも幾度と無くしたが、最近はもっぱら米蔵さんの船で
連れて行ってもらう。船なら荷物も運べる。
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写真は、湾奥の浜でここは最近、ダイバーたちも休憩で上陸するようになった。
湾の沖合い真ん中辺りに、ピシがあって、その辺がダイビングのスポットになっている。
キャンプしていると、日中、1,2隻の船が沖で停泊していて、午後には帰っていく。

すると、人の気配はまったく無くなる。と言っても日中でも浜に人の気配はない。
滞在中に人に逢った事は、ほとんど無い。
毎日、朝、水を汲んで、火を焚き、炊事をして、浜を歩いたり、山に入ったりして過ごす。
たいした目的は無く、浜に漂着した種子を探したり、芽生えを観察したり、
あとは、廃村跡周辺の山の斜面に自生するクバの群落を眺めたりする。
朝夕は、魚を釣り、昼間潮が引けば少し海を歩く。
ただ、ただ、火を焚き炊事し、時を過ごすのが楽しい。
夜は焚き火にあたり、闇の向こうの海の気配をまじかに感ずるだけでいい。
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そんな暮らしをしていても、日々、新しい発見がある。
一日の薪を集めに浜で流木をひろっていて気づいたことが、この写真だ。
流木と砂とその上のヤドカリの足跡、それに自分の足跡も写っている。
「発見」したものとは、「月の砂」(?)だ。
星砂や太陽の砂は、多くの人がご存知かと思う。
海に棲む原生生物である有孔虫の遺骸だ。
生物学的に言えば、バキュロジプシナとカルカリナの遺骸。

南の島では、陸地の岩石が風化したり、破壊された砂よりも、海に生息する
生物の遺骸が圧倒的に多い。
星砂の浜は、リーフ付近の海藻などに付着しているのが見られる有孔虫が
打ち上げられたものだし、それにサンゴ片や貝類の破片などが混じっている。
それでは、この「月の砂」の正体は何だろうか。
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まずは拾い集め、(慌てることは無い)火を焚いて、海を眺め、考える。
タバコを吸い、海を眺め、流木を火にくべ、考える。
「そうだ、貝蓋だ」と思いつく。
「直径5mmにも満たない小さな貝蓋が何故こんなに沢山あるのだろう」
「何貝の蓋だろう」
「どうして打ち上げられたのだろう」
つぎつぎと疑問が沸く。
まずは、何貝の蓋か調べてみよう。それには貝殻を集め、貝口と蓋とが会うかどうか、
確かめてみよう。
貝殻を集めるには・・・(そうだ、ひとまずは昼飯をたべて)・・・
米をといで炊き、朝釣った魚の味噌汁を温め、飯を食う。
そして、後片付け、食器を海の水と砂で洗い、鍋に残った魚の頭と骨を砂に埋める。
これで良し。あとは待つだけ。(その前にちょっと用事をたして)・・・
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翌朝、昼飯の残飯を埋めた跡と用足しの跡、夕飯の残飯を埋めた跡を見て廻る。
いるわ、居るわ、貝殻が・・・じゃない、ヤドカリが・・・
シンデレラ姫はどなたじゃ・・・貝蓋に合う貝口を持つ貝を探す。
貝蓋を持つ貝と言えば、サザエさんの仲間が多いので磯野さん一族を入念に調べる。
サザエ科の貝でも蓋の薄いものもあるので、それらはどがえしして、
丈夫な蓋を持つ、大小のサザエ科の貝を検討する。
小型のカンギクは、鹿川湾周辺には少ないし、蓋の厚み、の丸みが高いので違うようだ。
あれこれやっているうちにシンデレラ姫候補は、大型になるサザエ科の一種の稚貝となった。
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写真の貝三列の一番下はチョウセンサザエの稚貝。
これが限りなくシンデレラ姫に近い。
それでは、どうして打ち上げられたのだろうか。
焚き火にあたり、海を眺め、タバコを吸い、あくびをしながら考える。
この海は、ラグーンが発達していない、裾礁と言われる地形をしている。
したがって、沖のリーフはずれまでは、意外と平坦で、外洋に接する。
リーフはずれに生息する貝類の遺骸は、波で砂浜まで容易に運ばれる。
そのため、昔から、ジュセイラなどの貝が良く拾われ鹿川貝などと呼ばれてきた。
そのように、リーフ際に生息するサザエ科の貝も人の手をへずとも打ち上げられるのだ。
貝蓋の大きさからして、着床して一年未満ぐらいの稚貝と思われる。
多くの貝が、この時期に魚やカニに食べられ、貝殻は粉砕され、
硬い蓋だけが形を残し打ち上げられたのだろう。
もちろん、粉砕された貝殻もやがては砂になる。
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写真は、打ち上げられたサンゴ片と貝など。
沖のリーフ付近から波で運ばれた小さな貝蓋は、打ち上げられ、
はじめは砂と混じっているが、雨が降り、細かな砂が流れたり、
乾燥して風で表面の砂が飛ばされて行くうち、砂よりは大きな貝蓋は砂の表面に残るのだろう。

それにしてもあれだけの貝蓋が見られるということは、
多くの稚貝が成長する以前に食べられたりして死んでしまうことなのだろう。
海の生き物が、産まれては死に、産まれては死に、数限りなく多くの命が、
打ち上げられ、砂浜を作る。
地球は命の星とも言えるが、地球もまた宇宙にバラまかれた一粒の砂なのかも知れない。

by modama | 2012-11-17 12:24 | Comments(0)