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2014年 09月 25日

Entada parvifolia コバモダマの故郷と系統

モダマでは小型種子のコバモダマは、南西諸島や本土の福井などに漂着していることは前に書いたが、
フィレピンのルソン島、ブスアンガ島、ゴロ島などに分布するこの種の系統を探ってみよう。
アジアのモダマは、もともとアフリカに自生していたEntada rheedii を祖先とし、アジアの西側から大陸内部
や海洋の島々に拡散したものと考えられる。
大陸の内陸部へいち早く進出したE, rheedii は、山岳部において種子の浮力を喪失しつつあり、浮力を有する種子は河を下り、
海洋に流れ出て海流散布をへて島々に拡散した。
その一部がE, phaseoloides に分化したり、E, borneensis へと分化したわけだが、
それとは別に大陸内部でも分化が起こり、小型種子のE, glandulosa やE, reticulata が誕生した。
そして、種子に浮力を有するE, reticulata が海洋を渡りフィリピンへ流れ着き島嶼で分化したものが
E, parvifolia と考えられる。この種子が南西諸島や本土に漂着しているわけだが、まだ、自生は確認され
ていない。
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上写真は、左がE, glandulosa の莢と種子、右がE, reticulata の莢と種子、下がE, parvifilia の種子。
下写真、E, parvifolia の莢と種子。

E, glandulosa は、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムに分布し、E, reticulata は、カンボジア、ラオス、
とラオスの国境に近いタイの一部に分布する。そして、E, parvifolia は、フィリピンである。

巨大なツル性で種子の大きなE, rheedii から、どのような環境でこれらの小型種三種は分化したのであろうか。
大陸での二種の分布地を検討してみよう。
タイ、カンボジアというとチャオプラヤ河の氾濫で肥沃な中央平原や、カンボジアではトンレサップ湖の周辺
や南部の果てしない平地をイメージするかもしれない。
分布の一部には含まれるが、どうやら発祥の地はイーサーンのような痩せた土地のように思われる。
いずれもケッペンの気候区ではサバンナ気候になるが、土壌には塩分が含まれ作物などの生育にはあまり適さないところである。
分化した遠い過去においては、現在よりさらに厳しい環境だったように想像する。現在のアフリカのサバンナ
のように背の低い木々と草のはえる荒れ地だったのかも知れない。
それらは、細く背丈の低いツルや小さな葉が沢山着く事、E, reticulata においては魂茎を形成することなどから窺える。乾季と雨季に分かれた天候は、安定せず長い干ばつがつつずいたりもしたのであろう。
しかし、ひとたび雨が降れば、辺り一面は広大な氾濫原と化す。平野部での氾濫原は、数か月もすれば水が
引き、また、原野に戻る。この天気の周期と氾濫は種子の水散布には適している。
これぐらいの周期であれば、浮く種子は勿論のこと、沈む種子も拡散し易い。特に丸い種子は水の引きと共に
沈んでいても移動が可能である。
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上写真は、カンボジア中部の氾濫原、広大な土地が水浸しになる。(雨季)
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上写真はカンボジア南部の乾季のはじめ12月の風景。
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上写真、カンボジア中部の村で洪水は、年中行事のようなもの。

ラオスでは9月に青々した稲田の畔にE, reticulata の莢が実っていた。まだ完全に種子は熟していない。
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この田圃も乾季の終わりごろの4月になるとひび割れてカチカチの田になる。E, reticulata は葉を落とし、
ツルも一部が枯れる。地下では魂茎が雨を待っている。
背丈の低い木々の林には枯れた莢に熟した種子がついていた。
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上写真、9月には青田だったが、4月にはオートバイで走れる田に変わっていた。
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上写真、枯れたツルに残っていた莢。

東南アジアの大陸に分布する小種子系のモダマ二種の自生環境は以上である。
これらと、島嶼のフィリピンに分布するE,parvifolia コバモダマを含めた種子の浮力保有率は以下である。

E, glandulosa カンボジア   10%
            タイ        0%
E, reticulata ラオス      83,5%
            タイ        14%
E, parvifolia フィリピン     93%  

(第13回漂着物学会発表より)

系統的には、E, glandulosa → E, reticulata → E, parvifolia という分化が考えられ、
島嶼に渡ったE, parvifolia が最も種子浮力保有率が高い。
種子形態的にみると、丸い種子のE, glandulosa は沈み、やや扁平なE, reticulata が浮き、
島に渡った同じくやや扁平なE, parvifolia が93%の浮力保有率を占めている。

そして、大陸のサバンナ気候から島嶼の海洋性モンスーン気候へ移ったE, parvifolia は、大陸二種に
比べ葉が大きく、ツルもやや大きい。
このように環境による形質変化を、モダマをとおして知ることができる。
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上写真、フィリピン・ブスアンガ島のE, parvifolia コバモダマ自生地。
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by modama | 2014-09-25 15:00 | Comments(2)
2014年 09月 16日

いいかげんなのか戦略か

ボルネオ、コタブルのクアラ・アバイの浜に漂着していたジオクレアの種子を水に浸し蒔いてからひさしい。
すでにひとつは、発芽して葉が四枚も展開している。
最近になって、また、ひとつが発芽した。
でも、残り4個は、何の変化もない。
春夏秋冬のある温帯とは違って、熱帯の種子は気温的には何時でも発芽できる。
とは言うものの、地域によっては乾季と雨季があったりして、水環境は変わる。
そんな地域では、水環境の良い季節に発芽した方が有利だとは思う。

モダマ種子もそうだが、無処理で水に浸して蒔くと、すぐに発芽してしまう個体とそうでない個体がある。
モダマの場合、二年後に発芽したりするものもある。
このバラツキは、「天候の異変に対応した戦略だ」と表現されたりする。

条件が悪ければ、じっと我慢するというのは理解できる。
でも、栽培して水管理はしているのにこんなにバラツキがあるのは、本当に「戦略」なのだろうかと疑ってしまう。
単に、いいかげんなだけではないだろうか?
この「いいかげん」をバラツキ、不揃い、と云い換えたり、個性と上品に表現してもよい。
いろいろあって、結果、うまくいっている。
つまり、同じ種の種子でも種皮の防水効果が異なり、発芽が速かったり、遅かったりするのではないだろうか。
その証拠に、「ヘソ灸」をしたり、「ヤスリガケ」をすると、意外と早くそろって発芽する。

モダマやジオクレアの種子を発芽させていると、そんな考えが浮かぶ。

しかし、こんな言い方もできる。「いいかげんさ」が戦略なのだ、と・・・
物は言いよう・・・と云うことか?
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by modama | 2014-09-16 16:16 | Comments(7)
2014年 09月 10日

サガリバナの実

今年7月は、島を留守にしていたのでサガリバナの花を見ることはできなかった。
下旬に戻って、犬のジンを散歩させに家の裏の谷間に行くと、渓流沿いにあるサガリバナが小さな実をつけていた。
行くたびに実は、大きくなり、今日は落ちたものもあった。
写真を撮っておこう、と脚立とカメラを持ってでかけた。
自然は刻々と移ろうので、花の時期が過ぎたように、やがては実の時期もすぎてしまう。

この谷では、蝶のキミスジが近年定着していて姿が見られる。
最近は、ヤエヤマムラサキのオスがテリトリーを張っていて、別な場所でメスも見られたので発生するかも知れない。
道端にはクロヨナの花が散っていたので、秋のシジミチョウの季節も近づいているようだ。
もうじきタイワンクズの花もさくだろう。
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by modama | 2014-09-10 11:23 | Comments(4)
2014年 09月 07日

Entada parvifolia の花が咲き始めた

漂着モダマでとても小さな種子があるのは、かなり前から南西諸島のビーチコーマーの間では知られていた。
しかし、それが本当にモダマなのか、モダマであったら何という種なのかは長い間ナゾであった。何人かの人々は種子を蒔き、発芽までは成功した。
ところが、幼葉の期間が長く種を決定するに至らず枯死してしまう。その段階では、葉が羽状複葉であることからモダマであることまでは推測できた。
そんな漂着種子を「チビモダマ」と通称で呼んでいた。そして、チビモダマにも二つのタイプがあり、チョコモダマとドロップモダマと区別していた。
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左、チョコモダマ。右、ドロップモダマ

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西表島鹿川の浜

2010,4月、深石は鹿川の浜に漂着していたドロップモダマを持ち帰り、石垣島の自宅で蒔いた。5月11日には、吸水がはじまり、5月20日には発根した。その後、順調に生育したため、本種がEntada parvifolia ではないかと推測された。
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2010年9月中旬、深石は実生株がEntada parvifolia であることを確認するため、自生地であるフィリピン・ブスアンガ島へ飛んだ。(その紀行談は、このブログの奥にある)
結果、同種と判断された。それらは漂着物学会会報第36号に半野、深石、盛口、脇田らによって記載された。後に漂着物学会誌第10巻において、林、小寺によって福井県に漂着した同種が記載され、新称コバモダマと和名がつけられた。

そんな経緯を経た西表島鹿川漂着のコバモダマが、4年目にして蕾をつけた。
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蔓の太さは鉛筆程、プレハブの屋根に曳かれた電話線に絡みついている。
おそらく日本ではじめての開花を控えていると思われる。
(台風よ、来ないでちょうだい)

by modama | 2014-09-07 15:45 | Comments(4)
2014年 09月 06日

ボルネオ便り

先日、ボルネオ在住のN氏より写真添付のメールが届いた。

ボルネオの暑い一日が終え、夜になってテラスでグラスを傾けながら、PCに向かっているのだろうか。
時々、ゲッコ(オオヤモリ)が鳴き、階段の上がりはなではダンボール箱の中で大家さんのニワトリが卵を温めているのだろうか。
懐かしく滞在当時が思い出される。

メールの内容は次のとおりである。
「用事があって遠出した際、はじめてE, borneensis を見つけた道の前を通りました。車を止めて見ると、もお、
モダマの莢が1m程になっていました。写真を添付します。」
嬉しい便りだ。ボルネオ滞在中はじめに見つけたE, borneensis は花を沢山着けていた。それが今では1m程の莢が実っていると言う。
石垣島に居ながらにしてボルネオでのモダマの成長ぶりが分かる。
Phot by Nakaseko
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写真は石垣島産E, phaseoloides の分離節果内種子と臍の緒

滞在中、夜になると酒を飲みながらいろいろな話をした。あるとき彼は「モダマのタネは、莢の真ん中にできるんですね。
それからタネが成長して大きくなるので、臍の緒は莢の中でたわむのですね」
そのとおりだ。マメ科植物の莢とタネ、そして、両者を繋ぐ臍の緒は、いろいろなタイプがあって異なる。
例えば、誰でもが見るチャンスのある野菜のマメと比較してみるとよい。サヤインゲン、ソラマメ、、ラッカセイ、
エダマメ、などなど。
N氏は、さすがカメラマンだけあって観察眼が鋭いな、と感心した。

写真(上上)のモダマ莢を見ると、中央にまだ小さなタネがあるのが分かる。現在でも莢から臍の緒を通して栄養を
もらっているので、タネが大きくなれば当然、タネの周囲は莢に近づく(上下)、その分、臍の緒はたゆんでいく。
このタイプは、モダマの属するネムノキ亜科に多い。
普段、モダマの莢の成長を間近で見るチャンスは少ないので、植物に詳しい人でも知らないことが多い。

by modama | 2014-09-06 13:10 | Comments(2)
2014年 09月 02日

ヒョロヒョロのバオバブ・その後

ナンバンアカアズキの莢を採ろうと脚立に登って、辺りの木々を見てフッと思った。
「あれ、バオバブの木が見えない」
脚立を降りてからシーカーサーの枝をくぐって、昔、バオバブを植えた場所を見てみると幹は在る。
幹の伸びている上方を見上げると、ヤエヤマアオキの枝の下で曲がって、アカギの方へ伸びている。
幹廻りは、胸高で直径10cm程、以前より少し太くなったようだが、高さが伸びていない。
まわりのタマリンドやヤエヤマアオキ、シーカーサー、アカギに先を越され、日陰で伸び悩んでいるようだ。
ヒコバエの葉も弱よわしい。

曲がってしまったのは、台風や冬の季節風で北東の風を受けたせいだろう。

私のイメージでは、マダガスカルの巨大で凛としてそびえる樹形ばかしが心の中にあって、この姿は惨めでしかたがない。
遠く離れた環境では、あのようには育たないのだろうか。
そこでちょっと悩んだ。まわりの木々の枝を切ってバオバブに陽の当たる環境を作ってやるべきか、
それともそのままにして、成り行きを見守るか。

結果は「見守る」いや「見とどける」であった。
ヒョロヒョロのバオバブは、はたしてどんな風に成長するのであろうか。

心の中では、石垣島にマダガスカルでのようなバオバブがそびえ立って欲しいと願いつつ、
行く末を「見とどける」ことにした。

・・・ 頑張れ、ヒョロヒョロのバオバブ ・・・
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by modama | 2014-09-02 16:48 | Comments(2)