石垣島便り

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2012年 12月 19日

モダマで染めてみたら

前ページの「マメの解剖」で書いたモダマ種皮の構造で、種皮を三層に分けた。
防水層、生物防御物質含有層、抱水分膨張層、それに種皮を約一周する栄養送管。
これらをまとめるにあたって、適当な既存の用語はないかと随分探した。
しかし、見つからなかったので仮に名前を付けておいた。
機能をそのまま表現した。
その中で、生物防御物質包含層と言うのは、種子が他の生物によって食べられない、
あるいは食べずらい、成分を含んでいると言う意味だ。
あんなに大きなマメだから、食べ易くて美味しかったら、動物や昆虫が競って食べ、
自然界ではすぐに消滅してしまう。

熱帯の森では、物質循環が活発だ。
葉っぱにしろ、実にしろ、ひとたび林床に落ちれば、シロアリがすぐに利用する。
直接食べてしまったり、一度、菌床にして、そこでキノコを栽培して、それを食べたりする。
イノシシだって、涎垂の想いだろう。
そこでモダマは、それらの外敵(?)から、自らの身(実)を守っている。
それが苦い物質であるタンニンを含んだ層だ。
タンニンは、防腐作用もあり、菌類に対しても効果を発揮する。
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写真は、カンボジアの森で撮影したシロアリの仲間。
兵隊アリが見張る中、働きアリが瞬く間に葉を食べてしまう。
周辺には、落ち葉が少なかった。

モダマの種皮は、とても「すぐれもの」だ。
防水加工と腐朽効果を兼ね備えている。
それ故、昔からヨーロッパでは、嗅タバコ入れやマッチ入れに使われたり、
中国では薬入れ、日本では印籠、根付などに加工されていた。
18世紀頃の品が現在でも残っている。

それはともかく、生物防御物質包含層と決めるにあたって、成分分析をしなければならない。
ところが、悲しいかな、個人では機器も無けば、機関に依頼する費用も無い。
そこで思いついたのが、モダマ種皮で染めてみること。
染まり具合(色相)で、色素のけんとうがつく。
タンニン類は、古くから染織に利用されている。
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写真のように、モダマを種皮だけにして染めてみた。
鉄媒染で染まった色は、よく使う椎に似ている。
椎はタンニン系の色素を含んでいるので、おおよその見当はついた。
でも、まだ、科学的な見解ではない。
そんな時、フランスのドミニク・カルドン女史が日本のMorinda (アカネ科ハナガサノキ属)の
色素分析をしたいということで、活水女子大の寺田先生から連絡があり、
元武庫川女子大の麓先生らにもサンプルを送ることになった。
麓先生は紫外分光光度計による分析をしていることは知っていたので、
これ幸いとMorinda のサンプルと共にモダマ種皮のサンプルも送って、分析を依頼した。
結果、「縮合型タンニンは280nmに極大吸収があり、260nmに極小吸収のあることが
知られておりますが、モダマの種皮成分の極大吸収が280,5nmであり、極小吸収は259nmで
ありますので、モダマには縮合型タンニンが含まれていることが証拠づけられました」
というお便りをいただきました。(麓先生、ありがとうございました)

はじめは、経験からの感でしかなかったが、どんぴしゃりと当たっていた。
さらに、これまでのモダマ観察から感を働かせると、
莢の表皮にもタンニンが含まれていると想像している。
モダマの莢は、1mあまりにもなり、二枚の表皮が自然に剥がれ落ちるのだから、
染材に使えば、有意義な資源になる。
多くの植物染料が、樹皮や根などを使用するが、その場合、植物自体の生命に関わるが、
熟せば自ら落とす莢の表皮であれば、モダマ自体には何の損傷もないし、
森で拾えば良いだけだから、楽でもある。
ただし、日本では南西諸島にしか自生しておらず、豊富に有るのは石垣島と西表島ぐらいな
ものだから利用範囲は限られている。
東南アジアでは、利用価値があるだろう。

by modama | 2012-12-19 16:39


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