2013年 04月 17日
ネパール、モダマ巡礼の旅。ちょっと休んでマチャプチャレ日和 タライ平原から北に登りポカラに着いた。と言っても実際は前日まで居たタンセンの方が南にありながら標高は高い。どちらかと言うとヒマラヤに近づいたという方がただしいのだろう。 せっかく、ネパールに来たのだから街と森ばかり歩いていないで、ゆっくりとヒマラヤの峰峰を見たい。 タンセンから乗ったローカルバスには、私ともう一人欧米人の外国人がいて、ポカラの町外れのバスパルクに着いた時、宿まで二人で相乗りすることにした。はじめにタクシー運転手と私が宿まで交渉したら200Rで決まったので、それに彼が同乗するかたちになった。 私の宿に着いて、降りる時、150Rを彼に渡した。彼の宿もレイクサイドだから、ここからそお遠くはないはずだ。 これまで、アジアをいろいろ旅して来て、欧米人パッカーのタクシー値段交渉をいろいろ見てきた。 ラオス・ビエンチャンでは、女性のパッカーがフランス語で、まくしたてるものだから、交渉していたトラックタクシーの運転手が引いた。私が街中の宿に着いてから、しばらくして彼女たちも到着したが、結局、値段はほとんど変わらず、他の客を降ろすため遠回りして来たにすぎない。長い時間乗っても得したことにはならず、時間の無駄になる。 なにしろ、はっきりした目安がないものだから、旅案内書の価格にこだわる。 私の体験では、ベトナム以外の国では、それほどボッたりしないと思う。(それでも空港から街に入る時は、要注意) 着いた宿は、4Fの部屋で東と南に窓があって、トイレ、温水シャワー付きで10弗だった。 まず、部屋を見せてもらい、相手の言い値で納得すれば決める。 ポカラでは、これぐらいが相場だろう。むやみに値切り交渉はしない。 部屋の右手前に入り口があり、もうひとつのベットが左手にある。私の座っている椅子の前に小さな机があり、左手がトイレとシャワー室。これだけの広さがあれば充分だし、室内は清潔でもある。 静かな宿だった。4日滞在。 到着の夕方、宿のオーナーからトレッキングを誘われた。行きたいのはやまやまなのだが、目的が あることを告げた。オーナーは「パングラ」を知らなかったが、種子を見せて、誰か自生地を知っている人がいないか探して欲しいと頼んだ。もし、情報が入ったら車でガイドしてくれるようにもお願いした。彼にとっては、トレッキングで利ざやを稼ぐよりもモダマガイドで、自分が車を使って案内 した方がよいはずだ。「詳しい人に聞いておく」と言ってくれた。 兎に角、明日は日本山妙法寺のストゥーパがある山に登って、ヒマラヤを眺めてみたい。 翌日、はりきって朝6:00に出かけた。日の出の頃ストゥーパに着いたが、ポカラ盆地は靄につつまれていた。昨日までは天気がよかったのにな~。しばらくまった。 やがて、この寺を管理しているらしい白装束の男性が、朝のお勤めをはじめた。うちは太鼓を敲きながらストゥーパを時計回りに周り、正面に来ては祈りを奉げ、それを繰り返していた。 もう一人、チベット僧の着るあずき色の衣をまとった女性もいたが、彼女はお題目をあげず、静かな眼差しでようすを見ていた。眼鏡をかけた知的な初老の女性だった。 それにしてもいっこうに靄が晴れる気配が無い。待ちくたびれてベンチに腰をおろすと、その女性も 隣のベンチに腰をおろした。しばらくして、彼女が「向こうに行ってお茶でも飲もう」と言ってくれた。いや、そお言ってくれているように思った。(どんな言葉だったか、まったく記憶にない) 私は「晴れたらヒマラヤの写真を撮りたいから、まだ、待っていたい」と言うような意味のことを言ったはずである。(これも、何語で話したか記憶が無い)それから30分程すると、白装束の男性も姿を消し、下のほうから観光客が来だした。「もう、だめかな」と心の中で思っていると、ふっと、隣の女性が目にとまり「今日はあきらめなさい」といっている気がした。「そうだな、だめなときはだめなんだ」と思うと、女性がニコッと笑った気がした。それで「そうだ、お茶に誘われていたんだ」と思い出し、行きましょうと合図をした。はじめ声を掛けられた時から一時間はたっていたと思う。 その間、彼女は何を考えていたのだろうか。私の返事を待っていたのか、いや、そうではなく、私と同じように靄が晴れ、ヒマラヤが姿を現すのを待っていたように思われた。 たぶん、彼女は毎日の様に、ここからヒマラヤの姿を見て暮らしているのだろう。だから、自分が見たいというのではなく、私が見たいと思っていることに共感して「靄が晴れないだろうか」と彼女も時を過ごしていたように感じた。だから、私があきらめた時、彼女も同じことを感じ、我に帰ったのだろう。お茶の返事を待っていたのではない、と思った。 彼女が先にたって歩き、私が後をついて行った。ストゥーパへ至る階段の右手には、集会所みたいな建物があって、その横がトイレで、そこから少し離れて宿舎風の建物がある。手前が炊事場みたいで、奥に同じようなドアが幾つか並んで、その前が広いスペースのフロアになっている。 入り口にはロープが張ってあり、ノーエントリーと書かれた看板が吊るされている。 そのロープをまたいで、炊事場の方へ「お茶をお願いね」と声を掛けた。 隅に片付けてあった椅子を二つ持って来て、かけろと言う。 それからお茶が出てきて、20分ぐらい話して分かれた。 だか、後で気づくと何語で話していたのか、まつたく思い出せない。 内容は次のようなことだ。私は日本から来て、カトマンズからチトワン、ナラヤンガード、ブトワル、タンセンと廻って、昨日、ポカラについた。今日は、ヒマラヤを見にここへ来たが、あいにくの天気で見ることができなかった。ネパールに来た目的はパングラと言う植物を調べるためだ。(リックからモダマの種子をひとつ出して彼女に手渡した)この種子を握り締めていると、とても心が落ちつく。(彼女がうなづいているのを記憶している)・・・。別れしな彼女にそのモダマをあげた。 彼女がはじめ、お茶をさそったのも、炊事場にお茶を頼んだのも何語だったのだろう。 多分、彼女は英語を話さなかったと思う。ネパール語かチベット語に違いない。私もほとんど日本語で話していたと思う。でも、何だかすべて通じていたような気がする。 来た時の道とは異なり、宿舎の裏木戸からフェワ湖側の北斜面を降りて帰ることにした。こちら側は 南斜面と違って森が残っている。Castanopsis indica と思われる小さなクリが道に落ちていた。 モダマは探せなかった。 樹相は二次林の様で、大分人手が入っていると思われた。ときどき陽がさすと、林の中を蝶が舞った。 麓近くなると人里が見られた。林の中をがさがさ動く気配がするので何かと思うと、篭を背負ったご 婦人だった。水牛の餌を採っていると言う。先ほど山の上でお会いした方と比べると下界の人に見えた。(失礼) 石垣島でもよく見るようなセセリチョウがいました。 その翌日のことです。ついに、マチャプチャレ日和。 朝、夜明けに部屋で目覚めた。カーテンをひらくと東の空がすこし明るくなっていた。朝日の登るころに宿の屋上へあがった。正面にマチヤプャレの姿が見えた。 その日は、ポカラの街中を歩いて、いろいろな角度からヒマラヤを眺めた。 そう、そう、この日もただヒマラヤを眺めて歩いたのではなく、モダマ屋さんのありそうなオールドバザールも見て廻った。しかし、貴金属加工の店は多かったが、生薬屋はなかった。 写真は、ポカラの北にあるヒンドゥバシニ寺院より。 ヒマラヤの写真を撮っている時、寺院のベンチにいた娘「お茶しましょう」と声が掛かれば、すぐにでも返事するのに、声は掛からなかった。きっと、そお言われても言葉が通じないだろう。 世の中、摩訶不思議だ。 オールドバザールの家並み。 チベット交易も廃れ、街に活気はないが、まだ、古い時代の建物が残っている。 夕方、宿に戻ってビールを飲んでいるとオーナーがやって来て「パングラの情報、ありました。明日、行きましょう」と言う。自分で歩き廻らなくても、椅子に座ってビールを飲んでいるだけで、 こんないいこともあるのだな。明日が楽しみだ。
by modama
| 2013-04-17 11:05
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