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石垣島便り

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2013年 04月 18日

モダマを追って旅するアジア、4-8

ネパール、モダマ巡礼の旅、ポカラのモダマ
朝、宿の車で出発間際、オーナーが「うちのかみさんと友達も一緒するが、いいか」と訊ねてきた。
「もちろん、かまいませんよ」と答え、私が助手席に座り、二人の女性が後部座席に乗り込んだ。振り返って見ると、二人とも街へ買い物にでも出かけるような身なりをしている。「???」
車を運転しているオーナーから「かみさんの友達の故郷だから、一緒に行く」と聞かされ納得した。
行き先は、ポカラから南西へ流れるSeTI NADI 川の右岸を20km程行ったバラッポカリ村だと言う。地図を見ても地名は載っていない。この川の左岸をカトマンズへ行く道が通っていて、途中、ベグナス湖やルパ湖などの観光地がある。その反対岸の小道を進んで行く。
まもなくして、村の入り口に到着するが、それから先は、徒歩で行く。一軒の農家に着いた。
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裏庭の方に回りこんで行くと、ヒゲのはえた男性が歓迎してくれた。今まで、ニワトリをさばいていたようで、庭の片隅にむしられた羽が散乱し、洗面器に首の無いニワトリが横たわっていた。
オーナーが「ここのニワトリは、とても美味しいよ」と言った。
空は雲が重くたちこめ、今にも雨の降りそうな天気だ。昼前に森へ行こうということになり、男が先になって歩き出した。その足取りが速い。
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女性二人を含めた私たちは、後からだらだらついて行く。一人の女性が、小屋を指差して「ここが、昔の私の家」と話しているとオーナーが説明してくれた。現在は、家族全員ポカラに住んでいるそうだ。オーナーの奥さんもこの近在の出身らしい。それで、ここから「パングラ」の情報を得たらしい。

まもなくすると、先を行っていた男性が小さな谷のところで木に登っている。追いついて見るとモダマらしいツルはない。彼が指差したのはムクナの莢だった。どうやらモダマとムクナを勘違いしているらしい。ひとつムクナの莢を割って種子を皆に見せたところ「パングラではない」と言った。それでは彼の立場が無いので「ムクナの資料も集めているので、助かります」と慰めた。
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家に戻って昼食の準備をはじめたら、雷を伴った雨がふりはじめた。裏庭の竈から急遽、鉄製の携帯用竈に火を移し変えてフロアで炊事することにした。この携帯用竈は浅い鍋状の鉄板に五択を取り付けただけの簡単な作りだが、島の浜などで焚き火をする時、炭が浜の砂を汚すので便利だなと思った。これがあれば、何処でも火が焚けて、後始末も楽だ。
雨は、さらに激しくなって強くトタン屋根を打つと思ったら、地面で雹が飛び跳ねていた、一円玉程の大きさで、片方が平らで、反対側が半球形をした形をしている。まるで製氷皿から取り出した氷のようだ。
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写真右が、今回ガイドをしてくれた宿のオーナードゥモさん。左がここの家主。真ん中は隣の人。
さすがに、普段から薪を使って生活しているとあって、外の竈から、すぐに火を移し、上手に火加減を整えた。まるで生木の様に見える枝でも上手に先の方から燃やしている。

フロアに置かれた簡易ベットには、一人の老人が座っていて静かに調理の様子を見守っていた。家の主人が鳥の内臓の部分を直火で焼いて、私と老人に差し出した。私は、この老人はこの家の家長かと思っていたが、後でドゥモさんから聞いた話によると身寄りの無い村の年寄りだそうだ。
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長い人生を歩んできた足、きっと、一度も履き替えたことがないのだろう・・・???

冗談は、さておき、料理が出来上がると奥の座敷で男達はネパール製ウイスキーの栓を開けた。もちろん、これが楽しみで、隣のオジサンや青年も集まってきている。家の主人が、部屋の隅から何やら植物の実を乾燥させたようなものを取り出してきて「これは元気になる薬だ」とか何とか言って手渡してくれた。ある男は、モダマの有る所を知っているとも言う。なにしろ、お酒がまわりはじめると
いろいろな話がとびだしてくる。
そこでガイドのドゥモさんは「これから行くところがあるので、失礼します」と切り上げる。みんなは、家の外まで送ってくれ、家主は両手を振って「また、来いよ」とか何とか叫んでいる。
車の中でドゥモさんが言うには「この村の人は、普段、お酒を飲まないから、これぐらいにしましょう」とのこと。ガイドとしては、冷静な判断だ。それと、彼の責任感があって、どうしてもモダマを
探さなければすまない、という気持ちがあるようだ。
帰り道に奥さんや一緒に来た友達の知り合いを見かけると「この辺でパングラ見かけない」と声を掛けている。ある人が「川のそばの畑の脇にある」と言うので行ってみることにした。
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間違えない、車の中から一目見て分かった。近づいて見ると、まだ、蕾ではあるが花序が着いている。これは素晴らしい。ナラヤンガードで莢と種子と葉を入手しているので、これで完璧に近い。
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ある図鑑でネパール産モダマをEntada phaseoloides として扱っているが、このように実物を見るかぎり、Entada rheedii に近い。そして、その種の中でもネパール、シッキム、北部ミャンマー、中国雲南、ラオスに分布するグループは、亜種として扱われてよいと思う。それらは植物分類を専門とする人に委ねるとしよう。

ここのモダマ自生地から少し上流側へ行くと、川が突然谷間の地中から流れ出ている。おそらく、河川堆積物の凝固した岩質の地下を流れていたものと思われるが、まるで、付近はカルスト地形のようにも見える。
バタレ・チャンゴとグブテシュワールマハーデブ洞窟と同種の地形かと思う。
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こんな風にして村を訪ねるのも楽しい。時間があればゆっくり飲んでもいいが、なにしろ、言葉が分からないのがネックだ。やはり、森で出会うのが良いのかもしれない。
今回は、ドゥモさんと奥さん、その友達にお世話になりました。ありがとう。

by modama | 2013-04-18 13:06


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