2013年 08月 03日
水辺に浮かぶトマト畑 船を一艘チャーターして、インレー湖を巡ることにした。ここはミャンマーの観光スポットなので多くの人が訪れる。私の目的は蓮の繊維から糸を作り、織りをしている場所を見たかった。自然界には糸に加工できる素材が多々ある。昆虫が吐いた絹、植物から採る綿、麻、芭蕉、などが一般に知られているが、他にも動物類ではクモの糸も使える。この糸で織った布で衣服を作り着ると、糸の持つ粘着性で高層ビルの壁面も自由に登ることができる(ウソ)。いや、糸には抗菌性があり、これを活用しての可能性がある繊維だ。一方、植物の蓮からの繊維は、イメージ性に優れている。実用性ではクモだが、イメージ性では蓮の方が優るだろう。そこで一度実際に見て、触って確かめたかった。 宿の前の船乗り場から出発。湖面と空の間を飛ぶようにして突き進む。爽快このうえない。時々、村々へ向かう乗合船ともすれ違う。 湖の中ほどにまで来ると、村人の乗る舟が漁や作業をしている姿に会う。足で櫂を操り網を引き揚げたり、籠罠を見て回ったりしている。一方、トマト畑の土を湖底から採取してせっせと運ぶ舟もある。 舟に積まれた泥は、湖に繁茂する水草の上に置かれ、畑の土にする。言わば水上農園で、水耕栽培とも言える。主作物はトマト。湖は一面のトマト畑でもある。舟の背後に見えるのがその畑で、近づいていくと畑が微かにたゆたっているのが分かる。 長い竹竿は、畑が流れて移動しないために湖底に差し込まれている。短い竹竿はトマトの支柱。前日、港付近をぶらぶらしていたら、竹を満載して運ぶ舟を見た。農業資材である竹は山の麓の村から買うのだろう。トマト栽培は、この地域の経済を支えている。 船は湖岸の村に近づき、水路を通って仕事場兼店の横に着けられる。階段を登って行くと・・・ いらっしゃい ひとりのご婦人が迎えてくれる。 つい最近、追突事故にあったらしい。(失礼) おっ、めずらしい。初源的な機掛けの方法で織っている。でも、糸染めの色が私にはシックリこない。化学染料のけばけばしさがむき出しだ。せっかく、このような技法で手間暇かけて織っているのだから、染めにも昔のままを取り入れて欲しい。と思った。ここでは、布は買わず玉に彫りのある腕輪をひとついただいた。首輪を持たせてもらったら、えらく重いものだった。それもそうだよな、直径1cmほどの真鍮をぐるぐる巻いているのだから・・・。肩がこらないかしら。 次に案内されたのが、銀細工の店。なんだか沖縄の(いや、何処でも同じだが)観光タクシーみたい。それでも、泳ぐ魚の銀細工をひとつお土産に買う。それからやっと、蓮の糸作りの工房に来た。 タナカをほっぺたに塗った娘さんが、蓮の茎にカッターナイフで軽く切れ込みを入れては、ぽきっと折って、中から出てくる細い繊維を机の上で撚っていた。一回に取り出す繊維が短いため節糸になるのはしかたないが、思っていたよりも不透明で光沢の無い糸だった。そう、人には勝手な思い込みというのがあって、それと現実が一致しないと、あらわな失望感に陥る。熱帯気候では、パイナップルやリュウゼツランの繊維の方が涼しげでいいかもな。勝手なものである。 しかし、温かみのある糸で、ショールなどには適している。えらく高いものにはなるが・・・ 一枚布が欲しいと店内を物色したが、蓮の繊維だけで織ったものには手がいかず、結局、絹織の横糸にところどころ蓮糸を使ったものを選んだ。 織の方では、いろいろな組織織を取り入れていた。誰か技術指導者がいるのだろうか。実用性のある新しい布にもどんどんチャレンジして欲しい。 工房を案内してくれた娘と窓外の蓮畑。 船頭に「買い物はもおいいから、ファイブデーマーケットへ向かって」と指示した。今日は、湖の南の端の村で五日に一度各村々で順ぐりに開かれる市がある。是非、覗いてみたいと思っていた。また、船をとばす。 村の船着場に来るとすでに船の着けどころがないぐらい賑わっていた。上陸すると道筋には露店が並び何処も同じような品揃えだった。でも、二つの店にムクナの豆をビーズにしたネックレスがあった。無残にも豆の横から穴があけられ、紐が通されているが、形を見るには支障がない。ひとつ買う。 周辺の山々からも各民族の人たちが、品物を持ち寄って来ていた。 後に、この人たちの一グループと別の場所で会うのだが・・・・・。 昼すぎると市場は、店を仕舞いはじめる。遠い村から来ている人達もいるからだ。私も船頭に「帰るよ」と声をかけた。船は一直線に北上し、湖面と空の間を飛んだ。宿に戻ってシャワーを浴び、体を冷やした。なにしろ直射日光の下にさらされっ放しだったから、全身が火照っている。少し休んでから自転車を借りて街をめぐった。 街の船着場に行くといたるところでトマトの出荷準備をしていた。今日の午前中収穫したものを夕方のトラック便に乗せ、翌朝にはヤンゴンなどの都市へ届けるのだろう。このトマトの出荷でも、製材所で板を切り、箱に作る人、それをリヤカーで満載して船着場へ運ぶ人、トマトを箱詰めする人、トラックに積み込む人、など多くの人が携わっている。湖の周辺では、稲作地帯と畑作地帯があり、サトウキビなども栽培されていた。豊かな土地だ。ひとつだけ気づいたことは、他の場所で良く食べた大型の河エビが食卓で見られなかったことである。この湖には、大型の河エビがいないのだろうか、たまたま見なかっただけだろうか。
by modama
| 2013-08-03 10:11
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