石垣島便り

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2015年 10月 08日

モダマ調査でお世話になった人々・その5

仕事でベトナムに滞在していた小菅さん一家が帰島した。その時「ベトナムに居た時、家族旅行でミャンマーへ行き、モダマをもらったのであげます」と言っていただいたモダマ種子がE. phaseoloides にそっくりだった。しかし、ミャンマーはE. phaseoloides の分布域ではない。そのことが気にかかって自分の目で確かめないといけないと思い出かけた。場所はヤンゴンから西へ広大なデルタ地帯を横切ったベンガル湾側のチャウンタである。

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写真、ヤンゴンのダウンタウン、かつて海上交易の拠点となった港町で各地からの人種が入り混じった街だ。正面に見えるのが仏教徒のパゴダ、左がイスラム寺院、その他ヒンズー寺院、中国寺院などがあり、脇道沿いにはインド人街、中国人街などが集まっている。

バスでチャウンタの街に着くと海沿いはリゾートホテルが立ち並ぶ観光地だった。しかし、7月だというのにシーズンオフで客は少なかった。私が泊まったゲストハウスも客は一人もおらず、オーナーは「準備ができていないがいいか」と言われて泊めてもらった。いったい何月がシーズンなのだろう。それはともかく私が来た目的を伝えた。ヤンゴンの街で前もって調べておいたモダマのミャンマー語を交えて「ゴンニンドーを探しに来た」と言うと「知ってはいるがこの辺りにはない。隣の村にあるかも知れない」という返事だった。是非行きたいので誰かガイドを探してくれないかと頼み込んだ。オーナーは携帯を何度かかけたが、しばらく待ってくれということだった。それで初日は浜でビーチコーミングをして漂着モダマやジオクレアを拾い、種子の形が小菅さんからいただいたものと似ていることを確認した。
翌朝、オーナーが「連絡がとれたので、スタッフとバイクで行ったらいい」と言ってくれた。まだ、少年のようにあどけなさが残るスタッフと出かけることにした。着いた村は河川の汽水域から少し遡った位置にあり、ココヤシに囲まれていた。

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一軒の家を訪ねるとスタッフと同年配ぐらいの青年が出てきて、出かける準備をした。村の田圃をぬけて小高い丘を登ったところにモダマ自生地はあった。

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葉もE. phaseoloides とE. rheedii の中間のような形態だった。この知見はモダマの分布拡散と分化を考える上で興味深いものである。種の分類はさておきミャンマーの西側(ベンガル湾側)と東側(タイ国境側)とでは形態的に異なることが分かった。

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種子形態でもE. phaseoloides によく似たものが混じったいる。

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カシューナッツの畑で撮影。ありがとうございました。

追記、ミャンマー・ベンガル湾側のモダマ種子の形をチェックしてみましょう。


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〇印をつけた種子を単独で見るとE. phaseoloides に似ている。もし、こんなのが漂着したら間違えるかも知れない。漂着種子の同定は難しい。一方、このような形態の種子がスマトラとかジャワ島に漂着して、ミャンマー西部と同じような熱帯雨林気候で生育し続けたらどうなるだろうと考える。形質の固定化がおこらないだろうか。海流散布は広い地域に行われるが、上陸して自生できる環境は限られている。たまたま、〇印タイプが上陸、自生に成功した地域では、このタイプが島の一部の条件下で隔離されることになる。
スンダランドで分化したと思われるE. phaseoloides は、もともとE. rheedii から分化した種であるからこのような形態(種子形態を含めた)のバラつきから選択されたものであろう。それには島嶼への漂着、隔離、環境などが作用しているように思われる。
一方、大陸内陸部を東へ分布拡散したグループは、ネパールからミャンマー山岳部、タイ山岳部、中国雲南山岳部、ラオス山岳部をかつて地形が比較的穏やかだった時代、東へ拡散し、と同時に隆起の影響を受けて河川の開析によって隔離と下流域への拡散が起こる。東南アジア広域にE. rheedii は分布するようになる。と同時に河川から海へ流出した個体群は海流散布されてスンダランド、オセアニアへも拡散した。
当然、大陸内陸部でも地形的に隔離が起こる。そして、浮く種子は流れ易く、沈む種子は流れずらく選択圧がかかる。同じメコン流域のE. rheedii でもラオス山岳部の種子はほとんど浮力を有さず、下流域のカンボジアでは逆にほとんどが浮力を有する。形質の種内変異が起こる。
また、海を越えるためには「浮く種子」であるという選択圧がかかる。そして島嶼にたまたま漂着した種子の中で、たまたま上陸可能な地形にたどり着いた個体はその地で自生し形質を留めるとどうじに島という限られた地形と条件下で再び隔離される。時には、違った地域からの個体と出会うこともあるだろう。島嶼への漂着は交雑と隔離の両局面を担う。
島嶼においても隆起が伴えば隔離されると共に分散(河川から海へそして海流散布)が進行する。一方、海浜性植物の多くの場合は、自生地が海と内陸部狭間のニッチに限られる。ここでははっきりと区別して認識しなければならない。
詳しくは別の項目を作って述べたい。





by modama | 2015-10-08 10:43


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